「CADオペレーターの仕事に興味があるけど、ネットで調べると『やめとけ』って言葉が出てきて不安…」
「将来性がないって本当？自分に向いているかどうかわからない…」
CADオペレーターという仕事に、そんな風に迷いや不安を感じていませんか？
結論から言うと、CADオペレーターは「やめとけ」と一概に言える仕事ではありません。たしかに、給料面や将来性で厳しい側面があるのは事実です。しかし、それ以上に大きなやりがいや楽しさがあり、スキル次第で未来を切り拓ける魅力的な職業でもあります。
なぜなら、CADオペレーターの仕事は、設計者の意図を正確に図面に起こすという、ものづくりの根幹を支える非常に重要な役割を担っているからです。
例えば、私の友人には、単純な修正作業の繰り返しに「楽しくない」と感じて転職した人もいます。
一方で、建築事務所で設計者と二人三脚で複雑な図面を仕上げ、自分が関わった建物が完成したときに涙が出るほど感動した、と話す友人もいます。彼は今、在宅でフリーランスとして活躍しています。
「でも、給料が安いって聞くし、AIに仕事が奪われるんじゃないの？」という声が聞こえてきそうです。ええ、その気持ち、すごくよくわかります。確かに、誰にでもできる簡単な作業だけでは、高い収入や安定した将来は望めないかもしれません。
しかし、それはどんな仕事でも同じではないでしょうか。大切なのは、「やめとけ」という言葉の表面だけを鵜呑みにせず、その理由を深く理解し、自分自身の適性やキャリアプランと照らし合わせることです。
この記事を最後まで読めば、「CADオペレーターはやめとけ」と言われる本当の理由から、この仕事の楽しさ、そしてあなたが後悔しないための判断基準まで、すべてが明確になるはずです。
「CADオペレーターはやめとけ」と言われる厳しい現実
まず、目をそむけずに「やめとけ」と言われる厳しい現実について見ていきましょう。ネガティブな情報を知ることは、後悔しない選択をするための第一歩です。
給料が安く「底辺」の仕事だと感じやすい
残念ながら、「CADオペレーターの給料は安い」というイメージは、ある程度事実です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、CADオペレーターの平均年収は約455万円です。日本の平均年収が458万円（令和4年分 民間給与実態統計調査）なので、平均よりやや下回る水準です。
参照：CADオペレーター – 職業詳細 | job tag（職業情報提供サイト（日本版O-NET））
特に、経験の浅いアシスタント的な立場や、派遣社員・パートなどの非正規雇用の場合は、年収200万円～300万円台というケースも少なくありません。設計者の指示通りに図面を作成・修正する「オペレーター」業務が中心だと、専門性が高いと見なされにくく、給与が上がりにくい構造があります。
こうした状況から、「頑張っても報われない」「底辺の仕事だ」と感じてしまい、モチベーションを維持できなくなる人がいるのは無理もないことかもしれません。
単純作業の繰り返しで「楽しくない」と感じることがある
CADオペレーターの仕事は、華やかなイメージとは裏腹に、非常に地道な作業の連続です。主な業務は、設計者が描いたラフスケッチをCADデータに起こす「トレース」や、既存図面の「修正・変更」です。
一日中パソコンに向かい、ひたすら線を引き、寸法を入れ、修正指示をこなす。この繰り返しに、「創造性がない」「誰でもできる仕事だ」と感じ、「楽しくない」という気持ちが芽生えてしまうことがあります。
もちろん、この地道な作業こそが、ものづくりの品質を支える重要な土台です。しかし、クリエイティブな仕事や、目に見える成果をすぐに感じたいタイプの人にとっては、単調で退屈な時間になってしまう可能性があるのです。
高いスキルが身につかず将来性への不安
「オペレーター」として指示された作業をこなすだけでは、設計や製図に関する根本的な知識や応用力が身につきにくい、という現実があります。キャリアアップを考えたときに、「自分にはCADを操作するスキルしかない」と将来に不安を感じる人は少なくありません。
近年ではAI技術の進化も著しく、単純なトレースや修正作業は、いずれAIに代替されるのではないかという懸念も出てきています。常に新しい技術を学び、自分の市場価値を高めていかないと、数年後には仕事がなくなっているかもしれない、という不安は「やめとけ」と言われる大きな理由の一つです。
【建築・土木】業界は特にきついと言われる理由
CADオペレーターが活躍する業界は、建築、土木、機械、アパレルなど多岐にわたりますが、中でも「建築・土木」業界は特にきついと言われがちです。
その理由としては、
- 覚えるべき専門知識が多い: 建築基準法や専門用語など、常に勉強が必要です。
- 急な仕様変更や短納期: 「明日までにこの図面を修正して！」といった急な要求も日常茶飯事。残業が多くなる傾向があります。
- 関係者との複雑な調整: 設計者だけでなく、現場監督や施工業者など、多くの人と関わるため、コミュニケーションの難易度が上がります。
こうした業界特有の厳しさから、心身ともに疲弊してしまい、辞めてしまうケースも後を絶ちません。
長時間のパソコン作業で目、肩、腰が辛い
これはCADオペレーターの職業病とも言える問題です。一日中、同じ姿勢でパソコンの画面と向き合い、マウスやキーボードを操作し続けるため、多くの人が目、肩、腰の不調を訴えます。
- 眼精疲労: 細かい図面を長時間見続けることによる目の疲れ、かすみ、ドライアイ。
- 肩こり・首こり: 同じ姿勢とマウス操作による筋肉の緊張。
- 腰痛: 長時間座りっぱなしでいることによる腰への負担。
こうした身体的な辛さは、日々の業務パフォーマンスを低下させるだけでなく、長期的に見ると健康を損なう大きなリスクとなります。自己管理ができていないと、仕事を続けること自体が困難になってしまうでしょう。
年齢を重ねると「おばさん」は厳しいという声も
「CADオペレーターは若いうちしかできない」「おばさんになったら厳しい」といった声が、特に女性の間で聞かれることがあります。これは、いくつかの要因が考えられます。
- 新しい技術への対応: CADソフトは日々進化しており、新しいバージョンや新しいソフト（BIM/CIMなど）への対応力が求められます。年齢を重ねると、新しいことを覚えるのが億劫になるのでは、という偏見です。
- 体力的な問題: 前述したような身体的な負担が、年齢とともに厳しくなると考えられています。
- 家庭との両立: 子育てなどが落ち着いた主婦（おばさん）が未経験からパートで始めるケースも多く、その場合の給与水準が低いため、「おばさん＝安い労働力」というイメージがついてしまっている側面もあります。
しかし、これは大きな誤解です。長年培ってきた経験や知識、コミュニケーション能力は、年齢を重ねたからこその大きな武器になります。
残業が多い
上記で説明したように、出図まぎわになると残業が増加傾向にあります。
しかし、最近は働き方改革の一環で、フレックスタイム制を導入している企業が多いため、暇なときは残業無しで帰宅し、忙しいときは残業するといった感じで仕事にメリハリを付けることができます。
参考までに以下は日本の業種別残業時間のデータになります。
CADの仕事に該当するのは、メーカー・商社や不動産・建設の部類だと思います。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査のデータから見るとCADオペレーターの月の労働時間は163時間になっています。
出典：CADオペレーター – 職業詳細 | 職業情報提供サイト（日本版O-NET）
ざっくり1か月が週5日で4週間だとすると、稼働日数は20日間。
1日8時間労働だとすると、定時時間は160時間になるので、上記の163時間から引くと、月残業が3時間の換算になります。
稼働日数が19日間で計算しても月残業が11時間です。
どうでしょうか？若干少ないイメージでしょうか？
もう一つデータを引用しておきます。
以下は令和5年の厚生労働省から発表されている毎月勤労統計調査によると産業別の残業時間のグラフです。
CADオペレーターが建築業界に多いとして、以下のデータを見ると、建設業の残業時間は、13.8時間となっており、他産業に比べてずば抜けて残業が多いとはなっていないようです。
出典：毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報｜厚生労働省 (mhlw.go.jp)
私の経験でも、CADオペレーターの残業は20h/月ぐらいで、自動車部品メーカーで70～100h/月やっていた時もありましたが、20年以上前の話しなので、今はそんなブラック企業はないと思います(笑)
この記事を読んだ方で、いやそんなことない！うちの残業はこれぐらいだ！などご意見ありましたら是非、コメントなど頂ければと思います。
在宅ワークならではの難しさ
CADオペレーターは、パソコンとネット環境があれば仕事ができるため、在宅ワークしやすい職種として人気です。しかし、在宅には在宅ならではの難しさがあります。
- 徹底した自己管理能力: 仕事とプライベートの切り替えが難しく、ついダラダラしてしまったり、逆に働きすぎてしまったり。
- コミュニケーション不足: 設計者との細かいニュアンスの確認がしづらかったり、ちょっとした相談が気軽にできなかったりすることで、ミスや手戻りが発生しやすくなります。
- セキュリティ管理: 図面は企業の機密情報です。情報漏洩のリスク管理を個人で行う必要があります。
「家で気楽に働ける」というイメージだけで在宅ワークを始めると、こうした壁にぶつかり、「会社で働いた方がマシだった」と後悔することになりかねません。
自分が思っていた仕事内容と違う
- CADオペレーター専任
- CADオペレーター＋別業務（兼務）
CADオペの仕事は大きく上記の2つパターンに大別されます。
問題は、２の方です。
CADのスペシャリストになるつもりで入社したのに、ふたを開けると事務仕事の割合が多かったり、中には事務仕事でも庶務的な仕事ということもあります。
このように入社してから思っていた業務内容と違ったということもあり得るので、面接の段階などでも確認しておく必要があります。
それでも入社後に自分の思っていた業務内容と違う場合は、思い切って転職をすることをオススメします。
やはり自分のやりたいことに合った仕事を探すなら転職エージェントに登録し、専門家にキャリカウンセリングしてもらいながら、自分に合った会社を相談してもらうのが近道です。
「CADオペレーターはやめとけ」と言われても後悔しない・向いている人の特徴
ここまで厳しい現実を見てきましたが、もちろん、CADオペレーターとして輝いている人がたくさんいるのも事実です。ここでは、どんな人が後悔し、どんな人が成功するのか、その分かれ道を探っていきます。
CADオペレーターに向いていない人の特徴
まずは、残念ながらこの仕事に向いていない可能性が高い人の特徴から見ていきましょう。もし当てはまる項目が多いなら、一度立ち止まって考え直した方が良いかもしれません。
コミュニケーションが極端に苦手な人
「オペレーター」という名前から、黙々と一人で作業するイメージを持つかもしれませんが、それは間違いです。CADオペレーターは、設計者やデザイナーの「想い」や「意図」を形にする仕事。そのためには、密なコミュニケーションが不可欠です。
「この線の意図は？」「この部分の収まりはどうしますか？」といった確認や提案を積極的に行えないと、意図と違う図面が出来上がってしまい、大きな手戻りやトラブルの原因になります。コミュニケーションを避けたい、という人には厳しい仕事です.
地道な作業が苦痛に感じる人
ミリ単位の修正、膨大な量の図面チェック、何度も繰り返される変更作業。CADオペレーターの仕事は、こうした地道で細かい作業の積み重ねです。
大雑把な性格だったり、すぐに飽きてしまったりする人、常に新しい刺激を求める人にとっては、この仕事は苦痛に感じられるでしょう。「正確さ」や「忍耐力」が何よりも求められる世界なのです。
CADオペレーターに向いている人の特徴
一方で、以下のような特徴を持つ人は、CADオペレーターとして大きなやりがいを感じ、成功する可能性を秘めています。
ものづくりが好きな人
これが一番大切な素質かもしれません。一本の線がやがて立体的な建物や精密な機械部品になる。そのプロセスにワクワクできる人、図面を見ながら「これが実際に形になるんだ」と想像して楽しめる人は、CADオペレーターの適性があります。
自分の仕事が、世の中の「ものづくり」の土台になっているという実感は、何物にも代えがたい喜びとなるでしょう。
正確さが求められる作業が得意な人
図面における1ミリの誤差が、実際の現場では大きな欠陥や事故につながる可能性があります。そのため、細部までこだわり、間違いを見逃さない几帳面さや集中力が非常に重要です。
「間違い探しが得意」「パズルのように細かい作業を組み合わせるのが好き」という人は、その能力を存分に発揮できるでしょう。
CADオペレーターの仕事が「楽しい」と感じる瞬間
では、実際にCADオペレーターとして働く人たちは、どんな瞬間に「この仕事をしていて良かった」「楽しい」と感じるのでしょうか。
- 自分の描いた図面が「本物」になった時:自分が関わった建物が完成したり、製品が店頭に並んだりするのを見た時の感動は、言葉にできません。ものづくりの醍醐味を最も感じられる瞬間です。
- 複雑で難しい図面を完成させた時の達成感:パズルのような難解な図面を、試行錯誤しながら完璧に仕上げられた時の達成感は格別です。自分のスキルアップを実感できます。
- 設計者やチームから頼りにされた時:「〇〇さんにお願いすれば安心だ」「この部分、どうしたらいいかな？」と、単なる作業者としてではなく、パートナーとして頼りにされた時、大きなやりがいを感じます。
今後の将来性とキャリアアップの方法
「やめとけ」と言われる理由の一つである将来性の不安。しかし、悲観する必要は全くありません。むしろ、スキルアップ次第で、あなたの市場価値は飛躍的に高まります。
今後の将来性
確かに、単純な2D図面のトレース作業は、将来的にAIに代替される可能性があります。しかし、建設業界ではBIM（ビム）/CIM（シム）と呼ばれる3次元のモデルに様々な情報を統合する新しい手法が主流になりつつあります。
これは、単に立体的な図面を描くだけでなく、コストや管理情報、部材のデータなどを一元管理する技術です。このBIM/CIMを扱える人材は現在、圧倒的に不足しており、非常に高い需要があります。
つまり、2D-CADしか使えないオペレーターの将来は厳しいかもしれませんが、3D-CADやBIM/CIMを使いこなせる人材の将来は非常に明るいのです。
スクールで新しい技術を学ぶ
BIM/CIMのような新しい技術は、独学で習得するのは簡単ではありません。専門のスクールに通い、体系的に学ぶのが最も効率的です。
費用はかかりますが、これは未来への投資と考えるべきでしょう。スクールでは、同じ目標を持つ仲間と出会えるというメリットもあります。
資格を取得する
自分のスキルを客観的に証明するために、資格取得も有効な手段です。
- 建築CAD検定試験: 建築図面の作成スキルを証明する。
- CAD利用技術者試験: CADシステムの知識や作図スキルを証明する。2次元と3次元があります。
資格があることで、転職時に有利に働いたり、資格手当が支給されたりする場合があります。
CADに強い転職エージェントを活用し転職・年収アップを目指す
ある程度の経験を積み、新しいスキルも身につけたら、より良い条件の職場へ転職するのも重要なキャリア戦略です。その際、一人で転職活動をするのではなく、CAD業界や建築・ものづくり業界に特化した転職エージェントを活用することをおすすめします。
専門のエージェントは、一般には公開されていない好条件の求人（非公開求人）を多数持っています。また、あなたのスキルや経験を正しく評価し、キャリアプランの相談に乗ってくれたり、企業との条件交渉を代行してくれたりします。現状の給与に不満があるなら、転職によって年収アップを実現することは十分に可能です。
まとめ：CADオペレーターは「やめとけ」なのか最終判断
さて、ここまでCADオペレーターという仕事の光と影、両方の側面を詳しく見てきました。最後に、この記事のポイントをもう一度振り返ってみましょう。
- 「やめとけ」と言われる理由: 給与の低さ、単純作業、将来性への不安など、厳しい現実は確かに存在する。
- 後悔しない人: ものづくりが好きで、地道で正確な作業にやりがいを感じられる人。
- 将来性: 2Dだけでなく、BIM/CIMなどの3Dスキルを身につければ、将来性は非常に明るい。
- キャリアアップ: スクールや資格、転職エージェントの活用で、収入もやりがいも大きく向上させられる。
結論として、「CADオペレーターはやめとけ」という言葉は、特定の側面だけを切り取った、非常に一面的な意見だと言えます。
指示された作業をこなすだけの「オペレーター」で居続けるなら、その未来は確かに厳しいかもしれません。しかし、主体的に学び、スキルを磨き、設計者の意図を汲み取るパートナーへと成長できれば、これほど「楽しく」て「やりがいのある」仕事は他にないでしょう。
この記事が、あなたの不安を解消し、後悔のないキャリアを選択するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。あなたの「ものづくり」への情熱が、素晴らしい未来に繋がることを心から応援しています。
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