建築設備の設計や施工図作成に欠かせないCADソフト。その中でも特に多くの企業で導入されているのが「Rebro(レブロ)」と「Tfas(ティファス)」です。どちらも非常に優れたソフトですが、「結局、自分たちにはどちらが合っているんだろう?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、RebroとTfasのどちらを選ぶべきかは、BIM(ビム)にどこまで本格的に取り組むかによって大きく変わります。
なぜなら、Rebroは3Dモデルを主体としたBIMワークフローを前提に開発されているのに対し、Tfasは日本の建築設備業界で圧倒的なシェアを誇る2D作図の効率性を突き詰め、そこに3D・BIM機能を追加してきたという、根本的な「思想」が異なるからです。この思想の違いが、機能や価格、操作性など、様々な面に表れています。
例えば、BIMでのデータ連携が必須のプロジェクトで、Tfasをメインに使っていると、IFC(Industry Foundation Classes)という中間ファイル形式での変換作業が頻繁に発生します。この変換で一部の情報が欠落したり、修正に手間取ったりすることがあります。一方で、最初からBIMを前提とするRebroを使っていれば、RevitなどのBIMソフトともスムーズに連携でき、このような問題は起こりにくいのです。
もちろん、「どちらも3Dで配管やダクトが描けるし、大した違いはないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。たしかに、基本的な3D作図機能は両者に備わっています。
しかし、これからますますBIMが主流になる建設業界の動向を考えると、両者の思想の違いは、将来的な業務効率や会社の競争力に直結する重要なポイントです。それぞれの違いをしっかり理解し、自社の業務内容や将来のビジョンに合ったソフトを選ぶことが、成功への鍵となります。
この記事では、RebroとTfasの具体的な違いを、様々な角度から徹底的に比較・解説していきます。

今回は私自身も使用していた、サブコン業界ではよく使用されているCADソフトであるRebroとCADWe’ll Tfasの違いについて解説していきます!
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そもそもRebroとTfasとは?基本的な違いを解説
まずは、RebroとTfasがそれぞれどのようなCADソフトなのか、基本的な特徴から見ていきましょう。
Rebro(レブロ)とは?BIM時代をリードする3D設備CAD
出典:NYKシステムズのホームページ
Rebroは、株式会社NYKシステムズが開発する建築設備専用の3D-CADソフトです。最大の特徴は、BIMに完全対応している点です。
3Dモデルを作成すると、平面図、断面図、詳細図、拾い集計表などが自動で連動して生成されるため、整合性の高い図面を効率的に作成できます。特に、建築BIMソフトの代表格であるRevit(レビット)との親和性が非常に高く、スムーズなデータ連携が可能です。
操作性も直感的で分かりやすく、3D-CADが初めての方でも比較的習得しやすいと言われています。まさに、これからのBIM時代をリードしていく存在の設備CADと言えるでしょう。
また、Rebroとよく比較されるBIMソフトにRevitがあります。Rebroが「設備」に特化しているのに対し、Revitは意匠、構造、設備といった建築全体のモデリングが可能です。
一般的には、Revitで作成された建物モデルに、Rebroで作成した設備モデルを統合していくという連携方法が取られます。
Tfas(ティファス)とは?国内トップシェアを誇る建築設備CAD
Tfasは、株式会社ダイテックが開発する建築設備CADソフトです。日本の設備設計・施工の現場で長年にわたり圧倒的なシェアを誇っており、「設備CADといえばTfas」と言われるほどの知名度と実績があります。
その強みは、なんといっても2D図面の作成効率の高さにあります。長年のノウハウが詰め込まれた機能は非常に洗練されており、熟練者が使えば驚くほどのスピードで図面を仕上げることができます。
もちろん、Tfasも3D作図やBIMに対応しており、3Dモデルから各種図面を切り出したり、各種計算を行ったりすることも可能です。多くの企業で導入されているため、データのやり取りがしやすいというメリットもあります。
建築と設備のCADオペレーターの違いは?
少し話が逸れますが、CADオペレーターには「建築」と「設備」の分野があります。建築CADオペレーターが建物の骨格や内外装の図面を作成するのに対し、設備CADオペレーターは、RebroやTfasのようなソフトを使い、空調、衛生、電気といった、建物の「血管」や「神経」にあたる部分の図面を専門に作成します。どちらも建物づくりに欠かせない重要な役割です。
【結論】思想が違う!RebroとTfasの違い
改めて結論を言うと、両者の最大の違いは「作図思想」にあります。
- Rebro: 3Dモデルが絶対的な正。3Dモデルを作れば、そこから2D図面が生まれるという考え方(BIMネイティブ)。
- Tfas: 2D図面が基本。2D作図を効率化しつつ、3Dモデルも連携させていくという考え方(2D+3D)。
この根本的な思想の違いを頭に入れておくと、これから解説する具体的な機能差も理解しやすくなります。
RebroとTfasの具体的な違いを徹底比較
それでは、価格や機能、互換性など、具体的な項目でRebroとTfasを比較していきましょう。
① 価格・料金体系の違い|個人購入や月額料金は?
ソフトウェアを導入する上で、価格は最も気になるポイントの一つですよね。両者の価格体系は大きく異なります。
項目 | Rebro | Tfas |
購入形態 | ・パッケージ(買い切り) ・サブスクリプション | ・サブスクリプション |
価格帯(目安) | パッケージ:約150万円~ サブスク:月額 約3万円~ | 月額 約3万円~ |
個人購入 | 可能 | 原則として法人向け |
買い切りとサブスクが選べるRebro
Rebroは、一度購入すれば永続的に使用できる「パッケージ(買い切り)」と、年間や月単位で利用料を支払う「サブスクリプション」の両方を提供しています。
長期的に見ればパッケージの方がコストを抑えられますが、初期費用を抑えたい場合や、特定の期間だけ使いたい場合はサブスクリプションが便利です。個人での購入も可能です。
サブスクリプションが基本のTfas
一方、Tfasは基本的にサブスクリプションでの提供となります。これにより、常に最新バージョンを利用できるメリットがありますが、利用し続ける限りコストが発生します。また、原則として法人向けの販売となっています。
② BIMへの対応と互換性の違い
BIMへの対応は、両者の思想の違いが最も顕著に表れる部分です。
単体でBIMモデルを作成できるRebroとRevit連携
Rebroは、それ自体がBIMソフトとして機能します。作成した3Dモデルは、豊富な属性情報(部材のメーカー、型番、材質など)を持っており、設計から施工、維持管理まで活用できるBIMモデルとなります。
特にRevitとの連携機能「RebroLink」は非常に強力で、Revitで作成した建築モデルをRebroで開き、設備の干渉チェックや修正を高い精度で行うことができます。
TfasのBIM対応とIFC変換・互換性の注意点
TfasもBIMに対応していますが、そのデータ連携は主にIFC(Industry Foundation Classes)という中間ファイル形式を介して行われます。
IFCはBIMデータを異なるソフト間で交換するための世界標準フォーマットですが、変換の際に一部のデータが欠落したり、意図しない形状に変わってしまったりすることがあります。
Tfasから出力したIFCファイルをRevitで読み込む、あるいはその逆を行う際には、データの互換性を十分に確認し、必要に応じて修正作業が発生することを念頭に置く必要があります。
③ 操作性と作図思想の違い|「レブロは使いにくい」は本当?
「Rebroは使いにくい」という声を聞くことがありますが、これは主にTfasのような2D-CADに慣れている方が、3D中心の操作性に戸惑うことから来ているようです。
- Rebro: 3D空間に直接配管やダクトを配置していくような、直感的な操作性が特徴です。マウス操作が中心で、初めて3D-CADに触れる人でも比較的スムーズに習得できます。
- Tfas: コマンド入力やキーボードショートカットを多用し、2D図面をスピーディーに作成することに長けています。長年使っている熟練者にとっては、これ以上なく効率的な操作性ですが、初心者には少し敷居が高いかもしれません。
どちらが使いやすいかは、これまでの経験や作図のスタイルによって評価が分かれるところでしょう。
④ 3Dモデリングと拾い集計機能の違い
3Dモデリング機能においても、思想の違いが見られます。Rebroはリアルな3Dモデルを簡単に作成できる豊富な部材ライブラリを備え、複雑な納まりの検討も容易です。
一方のTfasも強力な3D機能を持ちますが、どちらかというと2Dで作図したものを3Dで確認するという側面が強いかもしれません。
また、拾い集計機能については、両者とも高精度です。作成したモデルから配管の長さや部材の個数を自動で算出し、見積もり作成の効率を大幅に向上させます。BIMモデルとして情報がリッチなRebroの方が、より詳細な集計が可能になる場面もあります。
⑤ 電気・空調・衛生など専門分野ごとの機能差
RebroもTfasも、空調・衛生・電気の各設備分野に対応した専門機能を搭載しています。
- 空調・衛生: ダクトや配管のルート検討、圧力損失計算、揚程計算など、両者とも高度な計算機能を備えています。
- 電気: 配線ルートの作図や盤の系統図作成など、電気設備特有の作図にも対応しています。
どちらか一方が特定の分野で極端に優れているということはありませんが、操作性やワークフローの違いから、会社や個人の得意な分野によって好みが分かれることはあります。
⑥ 動作環境(PCスペック)とサポート体制の違い
3Dモデルを快適に扱うためには、それなりのPCスペックが要求されます。特にBIMモデルを扱うRebroは、Tfasよりも高いメモリ容量や高性能なグラフィックボードを推奨しています。導入を検討する際は、現在使用しているPCのスペックも確認しておきましょう。
サポート体制については、両社とも電話やメールでの問い合わせに対応しており、充実したサポートが受けられます。
⑦ 口コミ・評判から見るユーザー層と将来性
口コミや評判を見ると、ユーザー層の違いが浮かび上がってきます。
- Tfas: 昔から業界を支えてきた熟練の設計者や、2D図面でのやり取りが多い会社からの支持が厚いようです。業界標準としての安定感は抜群です。
- Rebro: BIMへの移行を積極的に進めているゼネコンや設計事務所、新しい技術を柔軟に取り入れる若手技術者からの評価が高まっています。
将来性という観点では、国土交通省がBIMの活用を強力に推進していることが大きなポイントです。
この流れを考えると、BIMネイティブであるRebroの重要性は今後ますます高まっていくと予想されます。一方で、日本の建築業界に深く根付いたTfasが、その地位をすぐに失うことも考えにくいでしょう。
RebroとCADWe’ll Tfasのおすすめのスクール
RebroやTfasを効率的に学びたい場合は、専門のスクールに通うのも一つの手です。自分に合った学習方法を見つけることが、スキルアップへの近道になります。
まとめ:RebroとTfasの違いを理解し、業務に最適なCADを選ぼう
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 思想の違い: RebroはBIMを前提とした3D主体の思想。Tfasは効率的な2D作図をベースに3D・BIM機能を追加した思想。
- 価格: Rebroは買い切りとサブスクから選べる。Tfasはサブスクが基本で法人向け。
- BIM対応: RebroはRevitとの親和性が高く、スムーズなBIMワークフローを実現。TfasはIFC変換が基本となり、データ互換に注意が必要。
- 操作性: Rebroは3Dが直感的で初心者向け。Tfasは2Dに特化し熟練者向け。
RebroとTfasは、どちらも非常に優れた建築設備CADですが、その特徴は大きく異なります。「これからBIMに本格的に取り組んでいきたい」「Revitを使う会社との連携が多い」という場合は、Rebroが強力な武器になるでしょう。一方で、「まずは2D図面の作成効率を最大限に高めたい」「業界標準のソフトで安心して使いたい」というのであれば、Tfasが堅実な選択です。
今回の比較を参考に、自社の業務内容、将来のビジョン、そして一緒に働くメンバーのスキルなどを総合的に考慮して、最適な一歩を踏み出してください。
コメント
サブコンとゼネコンの説明が逆になっています。
良い記事なのにもったいない……。
Tfasにはお書きになっているレンタル版の他に時間課金版があり、
そちらは複数のPCで利用できますよ。
本当ですね。。修正しました。
ご指摘ありがとうございます!