近年、CAD(Computer Aided Design)は建築、土木、機械、電気、服飾など様々な分野で欠かせないツールとなっています。
特にブラウザ上で使えるCADソフトは、インストール不要でどこからでもアクセスできるという利便性から、ますます注目を集めています。
本記事では、クラウド環境で安心して利用できるブラウザ上のCADソフトを紹介し、そのメリットや選び方について詳しく解説します。
ブラウザ上で使えるCADソフトとは?
ブラウザベースのCADソフトの特徴
ブラウザベースのCADソフトは、特定のソフトウェアをダウンロードしてインストールする必要がなく、インターネット接続さえあれば、どのデバイスからでも利用できます。
これにより、ユーザーは自分の作業環境を問わず、どこでもプロジェクトにアクセスし、作業を続けることが可能です。
例えば、以前は職場の自席のパソコンにしかインストールされていなかったCADソフトも、客先や出先でインタネット環境とパソコンやタブレットなどのデバイスさえあれば、CADソフトのサイトにログインすれば自分がモデリングしていた3Dモデルにアクセスでき、それを見せることもできます。
3Dモデルを使ったコミュニケーションをより活発にすることができます。
デスクトップ型CADとの違い
ブラウザベースのCADソフトとデスクトップ版の大きな違いは、パフォーマンスがインターネット通信速度に影響を受ける点です。
インターネット接続の速度やサーバーの負荷に依存するため、複雑で大規模なモデルの処理においてデスクトップ版に劣ることがあります。
一般的にデスクトップパソコンは、スペース的にも余裕があることから高性能のメモリやGPUなどの部品を搭載できますし、大型のファンなど冷却性能も高い傾向にあります。
また当たり前ですが、ブラウザ上のCADはインターネット環境がないと動かせませんが、デスクトップ型は、オフラインでも操作が可能で、ネット環境が悪くても動かすことができます。
ブラウザ上で使えるCADソフトのメリット
ここではブラウザ上で使えるCADソフトのメリットについて更に深堀してみていきたいと思います。
一般的にクラウド型CADソフトのメリットは以下のようなものがあります。
- インストール不要
- 基本的に常に最新バージョンを使え、バージョンアップ不要
- クラウド上にデータ保存するためにローカルでのデータ管理が不要
- データをクラウド上に保存するためデータ共有しやすい
- マルチデバイス対応
インストール不要
今まではパソコン側にソフトをダウンロードしてインストールするのが一般的でしたが、クラウド型CADはサーバー側にCADソフトがインストールされていて、それをブラウザを通して使用するためパソコン側でインストールする必要はありません。
なので、ブラウザからインターネットを介して、使いたいCADソフトのホームページに行き、自分のIDとパスワードでログインして、CADソフトを使うイメージになります。
WindowsやMacといったOS違いのソフトをダウンロードして、インストールするといった煩わしい作業からユーザーは解放されるというわけです。
基本的に常に最新バージョンを使え、バージョンアップ不要
煩わしい作業と言えば、CADソフトのバージョンアップ作業などです。
使っていたCADソフトのバージョンが古ければ、最新版をダウンロードしてインストールする必要がありましたが、サーバー側で常に最新のバージョンにメンテしているのでユーザー側は、バージョンを新しくする必要はありません。
これはシステム部門にも大きなメリットがあり、大企業の場合、たくさんのパソコンに最新バージョンを配布して、バージョンアップされないパソコンは手動で行ったり、パソコンが多いほど、そういった配布作業が負担でしたが、それもサーバー側で行えば完了なのです。
クラウド上にデータ保存するためにローカルでのデータ管理が不要
クラウド上にデータ保存するためにローカルでのデータ管理が不要です。
ローカルにデータ保存すると、データが消えてしまったり、迷子になったりと煩雑なデータ管理になりがちです。
しかし、サーバー側でデータ保存することで、データは定期的に自動バックアップされるため、データ損失のリスクを最小限に抑えることができます。
誤ってデータを削除した場合でも、簡単に復元することが可能です。
またクラウド側で高度なセキュリティ対策も施されているため機密の観点でも安心です。
データをクラウド上に保存するためデータ共有しやすい
ブラウザベースのCADソフトは、複数のユーザーが同時にデータにアクセスし、リアルタイムで共同作業を行うことができます。
変更は即座に反映されるため、常に最新の状態で作業を進めることができます。
したがってコラボレーションの活性化に繋がります。
マルチデバイス対応
ブラウザベースのCADソフトは、デスクトップ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど、様々なデバイスで使用可能なケースが多いです。
モバイルデバイスでもブラウザを通じてCADソフトにアクセスできるため、外出先でも3Dモデルや図面の確認や簡単な修正が行えます。
これにより、重たいデバイスを持ち歩かずにすみますし、場所や時間にとらわれず、効率的に作業を進めることができます。
ブラウザ上で使えるおすすめCADソフト5選
【ブラウザ上で使えるおすすめCADソフト5選】
- AutoCAD Web
- Fusion360
- Onshape
- SketchUp for Web
- Tinkercad
ブラウザ上で使えるおすすめCADソフトの比較一覧
当記事でおすすめするブラウザ上で使えるおすすめCADソフトについて以下の通り比較一覧を作りました。
まずはこの一覧でざっくりの違いをご確認頂ければと思います。
CAD名 | 2Dor3D | 業界 | 無料or有料 | 開発元 |
AutoCAD Web | 2D | 建築、機械など | 有料(無料体験版あり) | Autodesk |
Fusion360 | 2D/3D | 機械、電気など | 無料(有料版あり) | Autodesk |
Onshape | 2D/3D | 機械、電気など | 無料(有料版あり) | PTC |
SketchUp for Web | 2D/3D | 建築、インテリア | 無料 | Trimble |
Tinkercad | 3D | 建築、機械など | 無料 | Autodesk |
AutoCAD Web
AutoCAD Webは、建築や機械など幅広い業界で使われているAutoCADのWeb版です。
ただメインは2D図面用で、図面の作成、編集、共有が可能で、DWGファイル形式に対応しています。
主な機能を列挙すると以下の感じです。
- 2D ファイルを表示
- 2D 図面を作成、編集、共有
- DWG 図面からブロックを挿入
- 注釈付けツールとマークアップ ツール
- 距離、角度、面積、半径の計測
24年5月時点で無料体験版はありますが、基本は有料での提供で、1カ月で1100円/月、1年で13200円/年の料金設定になっています。
AutoCAD Webの動作環境でいうと、以下のブラウザで動作可能です。
詳細は以下の公式ホームページをご確認ください。
- Google Chrome
- Mozilla Firefox
- Microsoft Edge
- Safar
Fusion360
Fusion360は、Autodeskが提供するクラウドベースのCAD/CAM/CAEツールです。
基本は3Dで機械系に強い印象です。
私も趣味で使いますが、非常に使い易く、また家のノートパソコンでも軽快に動作するので助かっています。
簡単な3Dモデリングであれば、無料版でも十分です。ただし、無料版は非商用利用に限るなどあります。
当サイトでもFusion360についての記事も多く掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
Onshape
OnshapeはアメリカのPTC社が開発しているブラウザ上で使える3DCADです。
Fusion360と同様に簡単な3Dモデリング程度であれば、無料版でも十分です。
もちろん使える機能が充実した有料版もあります。
PTCと言えば、ハイエンドCADのCreo(クリオ)の開発元としても有名です。
Onshapeの使い方などは以下の記事も参考にして頂ければと思います。
SketchUp for Web
SketchUp for Webは、アメリカのTrimble社が開発したSketchUpのブラウザ版です。
3Dモデリングをブラウザ上で行えます。
もともとSketchUpは建築やインテリアの分野に強いCADですが、SketchUp for Webもそれを継承しています。
Tinkercad
Tinkercadは、初心者向けの3Dモデリングツールで、インターフェースが直感的で使いやすいのが特徴です。
直感的に分かり易い操作性ゆえに子供向けの教育に使われるほどです。
無料で利用でき、初心者にも使いやすい点がメリットですが、複雑な設計には向かない点がデメリットです。
ブラウザ上でのCADソフト選びのポイント
目的に合った機能の確認
CADソフトを選ぶ際には、利用目的に合った機能が備わっているかを確認することが重要です。
一般的には以下のような利用目的によって使うCADも決めた方が良いです。
- 2Dのみか、3Dのみか、両方か
- 建築、機械、電気、服飾などどの分野で使うのか
- ユーザーのCADレベル
料金とコストパフォーマンス
予算に応じて、無料版と有料版のどちらを選ぶかを決めることが必要です。
無料版は機能制限や非商用利用とされていることが多いですが、初心者や軽い作業には十分な場合なことが多いです。
有料版はプロフェッショナル向けの高度な機能が提供されます。
ユーザーインターフェースの使いやすさ
CADソフトの使いやすさは、生産性に大きな影響を与えます。
操作コマンドが見つけられないソフトだと非常に生産性が悪くなります。
ダイレクトモデリング機能などより直感的な操作だと、初心者に適しています。
ブラウザ上でのCAD利用時の注意点
インターネット接続の必要性
ブラウザベースのCADソフトは、常にインターネット接続が必要です。
そふとをローカル端末にインストールしていないため、ネット環境がないとソフトの起動すらもできません。
したがって、いくらCADデータがローカル端末にあってもデータを開くことができないということになります。
データのセキュリティ
クラウドベースのCADソフトを利用する際には、データもクラウド側に保存するためセキュリティ対策はクラウド側に委ねられます。
したがって、使用するソフトウェアが提供するセキュリティ対策(データ暗号化、認証プロセスなど)を確認し、信頼性の高いサービスを選ぶことが重要です。
対応ブラウザとシステム要件
ブラウザベースのCADソフトを利用する際には、対応ブラウザとシステム要件を確認することが必要です。
ブラウザは、例えばGoogle Chrome、Mozilla Firefox、Microsoft Edge、Safarなどがあり、64ビット対応やブラウザのバージョンなどもあり、どのブラウザに対応しているかは事前にソフトの公式ホームページで確認しておく必要があります。
また、ブラウザの設定やプラグインの互換性も確認しておくとスムーズに利用できます。
ブラウザ上で使えるCADオススメのまとめ
この記事では、ブラウザ上で使えるおすすめのCADソフトについて紹介し、そのメリットや選び方、利用時の注意点について解説しました。
クラウド環境での作業は、安全性やコラボレーションの面で大きなメリットをもたらします。
自分の用途に合ったCADソフトを選び、効率的な設計・デザイン作業を実現しましょう。
- Qブラウザ上のCADソフトは無料で使えますか?
- A
多くのブラウザベースのCADソフトには無料プランがありますが、プロフェッショナルな用途には有料プランが必要な場合があります。
- Qインターネット接続が不安定でも使えますか?
- A
ブラウザベースのCADソフトはインターネット接続が必要です。接続が不安定な場合は、オフラインで作業できるデスクトップ版を検討することをお勧めします。
- Qデータの保存や共有はどのように行いますか?
- A
データはクラウド上に保存され、自動バックアップが行われます。共有リンクを生成することで、他のユーザーと簡単に共有することができます。
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