CADオペレーターという技術的な仕事がありますが、この仕事についてネットを調べていると、「やめとけ」や「いらない」などの言葉がチラホラと見られます。
ここで気を付けたいのがCADオペレーターと言っても建築なのか、機械、電気なのか、業界によっても仕事の内容が変わってきます。
本記事では業界の中でも1番人数の規模が多いと思われる建築CADオペレーターにおいて本当に「やめとけ」や「いらない」なのか?をCADの業界に20年以上いる専門家がその詳細についてご説明したいと思います。
建築CADオペレーターとは
建築CADオペレーターとは、以下の画像のような建築図面を作成・修正する専門職です。建築士やデザイナーの指示を受けてパソコンにインストールされたCADソフトで図面を描くのが主な業務で、通常は自ら設計のアイデア出しや意匠決定は行いません 。
例えば建築設計事務所では、建築士が描いたラフスケッチや構想をもとに、CADオペレーターが詳細な平面図や立面図を作図します。いわば「デジタル製図のプロ」であり、手描き図面を正確なデータにトレースしたり、設計者の意図通りに図面を整える役割を担います 。
上記も踏まえ、建築CADオペレーターと建築士(設計士)の大きな違いは、責任範囲と立場にあります。
建築士は国家資格を持ちデザイン全般を統括する立場で、建物のプランニングや構造計画、建造物の強度などに責任を負います。
一方、CADオペレーターは資格不要で従事でき、専門ソフトの操作によって設計者をサポートするテクニカルスタッフです。
設計の専門性が高い建築士に比べると、CADオペレーターは裏方的なポジションと言えるでしょう。
建築CADオペレーターが「やめとけ」と言われる理由は?
建築CADオペレーターについて調べると「やめとけ」という声を目にすることがあります。これはなぜでしょうか?以下では、主な5つの理由を解説します。
給料が低いと言われる
建築CADオペレーターの年収は低めだという指摘があります。実際、厚生労働省のデータ厚生労働省のデータではCADオペレーターの年収は約452万円とされています 。
これは日本の給与所得者全体の平均年収(約458万円 )とほぼ同水準かやや低い程度ですが、雇用形態や経験によってばらつきがあります。
特に未経験から始める場合の初任給や派遣社員の水準は月20~30万円程度(年収にして約240~360万円)と低めで 、「専門スキルの割に報われない」と感じる人も少なくありません。
必要とされる知識や技術の割に給与水準が低めである点が、「やめとけ」と言われる一因になっています。
単調な作業が多い
CADオペレーターの仕事はクリエイティブな設計というより、細かな修正作業の繰り返しであることが多々あります。
例えば設計者が描いた図面の清書や寸法修正、図面のトレース(写し取り)作業など、ルーティンワークが占める割合が高いのです。
「CADソフトを使って華やかなデザインをする仕事」と想像しているとギャップを感じるかもしれません。実際、「意外と単純作業が多い」という現場の声もあります 。
創造性を発揮する場面は限られ、与えられた指示に従って正確に入力・作図する地道な作業が中心です。そのため「仕事が単調でつまらない」「やりがいを感じにくい」と感じてしまい、将来に不安を抱く人もいるようです。
もちろん専門性の高いBIMや3Dモデリング業務に携われば創造的要素も増えますが、特に経験が浅い、下積み時代は単調作業の連続になる可能性が高いでしょう。
キャリアアップが難しい
CADオペレーターからのキャリアアップの道が限られることも懸念点です。建築CADオペレーターとして経験を積んでも、そのままでは設計士のようなポジションに昇格するのは容易ではありません。
設計そのものに携わらないため、社内での評価が「指示通り図面を描く人」にとどまりがちで、大きな昇進や役職ポストに結びつきにくい側面があります 。
特に大企業では、設計職とオペレーター職が明確に分かれており、オペレーターのままでは年次が上がっても待遇が大きく向上しづらいことがあります。
「このままで将来大丈夫か?」と不安になり転職を考える人も少なくありません。キャリアアップには、設計補助から設計者へと転身したり、BIMマネージャーなど上位の専門職に就く道もありますが、そのためには追加の資格取得や勉強が必要になります。
何もしなければ長年オペレーター止まりになりやすいため、「将来性がない」とネガティブに語られることがあるのです。
残業が多くワークライフバランスが悪い
建築業界は納期厳守の風土が強く、CADオペレーターも残業が発生しがちです。図面の納品期限が迫れば、設計者から夜遅くに修正指示が飛び込むこともあります 。
特に建設プロジェクトは複数の図面を同時進行するため、常にどこかの図面の締切に追われている状態になりやすいのです 。その結果、「毎日のように残業」「繁忙期は休日出勤」という職場も珍しくありません。
厚生労働省の調査でも建設業界の月間平均残業時間は全産業平均より長めというデータもあり、ワークライフバランスの確保が難しい傾向があります 。
もちろん職場によりますが、「基本定時で帰れるCADオペレーター職」は少ないかもしれません。プライベートの時間が取りにくくなり、肉体的・精神的にきついと感じてしまうことが、「やめとけ」と言われる理由に挙げられます。
AI・自動化で将来性が不安
近年、AI技術や自動化ツールの進歩により、CADオペレーターの仕事が将来AIに代替されるのではという不安も広がっています。
事実、CADソフトにも自動で図面修正したりレイアウトを最適化する機能が増えつつあり、定型的な作図作業は効率化が進んでいます。
創造性のいらない、手順の決まった定型的な作業はAIの得意分野であり、単純な図面の作成・修正・トレース程度であれば将来的にAIでも対応可能かもしれないと言われます 。
設計士やデザイナーがラフ案を入力すれば、ある程度自動で図面化できる時代が来る可能性も否定できません。その一方で、設計者の意図を汲み取り微妙なニュアンスを図面に反映させる作業はAIには難しいとも指摘されています 。
つまり、単純作業だけに留まっていると将来代替の懸念がありますが、高度なスキルを身につけていれば需要は残るということです。とはいえ、「このままのスキルでは将来食べていけないのでは」と不安を感じ、「やめとけ」と警鐘を鳴らす声が出ているのです。
以上のように建築CADオペレーターの悪い部分にフォーカスしてみてきましたが、裏方的な仕事でも建築の仕事がしたいという人にとっては魅力的な仕事でもあると思います。
次章ではこの仕事についてもう少し向いてる人、向いていない人について掘り下げてみたいと思います。
建築CADオペレーターは本当にやめとけなのか?向いている人はどんな人?
建築CADオペレーターは確かに大変な面もありますが、決して一概に「やめとけ」と切り捨てるべき職種ではありません。 向き不向きや、各自のキャリア目標によって評価が分かれる仕事と言えるでしょう。
向いている人
この仕事に向いている人の特徴としては、コツコツと作業を進めるのが好きで細かいチェックを厭わない性格、パソコンでの長時間作業に抵抗がない人、建築やモノづくりの世界が好きで裏方でも携わりたいという人などが挙げられます。
こうした人にとっては、CADオペレーターは専門スキルを活かして安定して働けるやりがいのある仕事となるでしょう。
実際、「ものづくりの一翼を担い完成に貢献できる喜び」や「図面という形で成果が目に見える達成感」をやりがいに感じて長く続けている人も多くいます。
向いてない人
一方、向いていない人の傾向は、自己表現やクリエイティブな提案をどんどんしたい人、早い出世や高収入を短期間で望む人、残業や納期プレッシャーのある環境が耐えられない人などです。
そうした人は、CADオペレーターよりも最初から設計職を目指したり、別業界でクリエイティブ職に就いた方がよいかもしれません。「CADオペレーターはやめとけ」という声の裏側には、こうしたミスマッチで苦労した人の経験があるのでしょう。
しかしながら、建築CADオペレーターとしてスタートし、後に一級建築士を取得して設計者に転身した例や、フリーのBIMオペレーターとして高収入を得ている例もあります。
キャリアの選択肢は決して一つではなく、本人の努力次第で道は開けます。 将来的に建築業界でどんなポジションに就きたいのかを見据えつつ、CADオペレーターの経験を積むことは決して無駄にはなりません。
むしろ図面を深く理解し現場感覚を養う下地として貴重な経験となるでしょう。
建築業界では技術革新が進んでおり、CADオペレーターの役割も変化しつつあります。2D製図だけでなく3Dや情報管理スキルを兼ね備えた人材(いわゆる「スーパーオペレーター」)は引き続き必要とされています。
2DCADについては以下の記事も参考にしてみてください。
「やめとけ」と言われる理由を踏まえて対策を講じれば、十分に活躍できる職種です。自身の適性とキャリアプランを見極め、「建築CADオペレーター」という仕事をステップアップの足がかりにできるかどうか考えてみてください。決して悲観することなく、チャンスある業界であることを理解すれば、きっと明るい展望が開けるはずです。
以上のような理由から、建築CADオペレーターは「やめとけ」と言われることがあります。しかし、これらの課題は工夫次第で乗り越えることも可能です。次章では他分野のCADオペレーターとの比較を見ながら、建築分野特有の特徴を押さえてみましょう。
建築業界と他業界のCADオペレーターの違い
ひと口にCADオペレーターといっても、活躍する業界によって仕事内容や必要スキルには違いがあります。ここでは建築分野と、機械・電気電子分野、インテリア分野のCADオペレーターを比較し、その違いを解説します。
機械系CADオペレーターとの違い
自動車メーカーや機械メーカーなどの製造業で活躍するCADオペレーターです。取り扱う図面は機械部品の設計図や装置の組立図が中心となります。3次元CAD(例:SolidWorksやInventorなど)を使って立体的なモデルを作成し、そこから2D図面を起こす業務も多いです。
機械系では材料の寸法公差や加工法など工学知識が求められますが、年収水準は建築分野と大きくは変わりません 。平均年収はおおよそ300万~400万円程度で、経験を積めば500万円超も可能な点も共通しています 。
キャリアパスとしては、機械設計エンジニアへステップアップしたり、CAE解析など専門分野に進むケースがあります。製造業界ではCADオペレーターを「CADエンジニア」と呼ぶこともあり、設計補助以上の役割を期待される求人もあります。
機械系の図面は今後3D図面が主流になっていくと思うので今から準備しておくと良いと思います。
電気・電子系CADオペレーターとの違い
電気設備や電子回路の図面を扱うオペレーターです。建築設備(設備CAD)や配電盤設計、プリント基板の回路図作成など、分野によって扱う図面は様々ですが、基本は回路記号や配線系統図などの専門図面をCADで引く仕事です。
使用ソフトもAutoCADの他、E-CADと呼ばれる電気専用CADを用いる場合があります。機械系同様に電気の知識(回路記号の意味や電圧・容量など)を理解する必要がありますが、こちらも収入レンジは概ね他分野と共通で平均年収は300万~450万円程度が目安です 。
電気工事士や第三種電気主任技術者などの資格を持っていると重宝され、将来的には電気設計者や設備エンジニアへの道も開けます。
インテリア系CADオペレーターとの違い
インテリアデザイン事務所や内装施工会社で働くCADオペレーターです。店舗や住宅の内装図面(平面図・展開図・家具配置図など)を作成するのが主な業務で、建築CADと似ていますがより意匠寄りの図面が多くなります。
使用ソフトはAutoCADやVectorworks、SketchUpなど、デザイン業界で使われるツールが中心です。空間デザインに関する感性も求められるため、美大・デザイン系出身者が就くこともあります。
給与水準は建築CADオペレーターと同程度で、内装業界のCADオペレーター年収は約300万~400万円程度とされています 。内装CADオペレーターの経験を活かしてインテリアコーディネーターや店舗デザイナーにキャリアチェンジする例もありますが、その際はインテリアコーディネーター資格などを取得すると有利です。
建築とインテリアは近しい分野のため、建築CADオペ経験者が内装図面を扱う職場へ転職することも比較的容易と言われます 。
このように、他業界のCADオペレーターと建築CADオペレーターは「扱う図面の種類」と「必要とされる業界知識」に違いがあります。ただし、給与面ではいずれの業界でも大きな差はないのが実情です 。
どの分野でもCADオペレーターは専門ソフトの操作スキル+その業界の基礎知識が求められ、経験を積めば収入アップも可能ですが、最初は300万円台からのスタートが多い点は共通しています。また、キャリアアップには各分野で設計者やデザイナーへのステップアップを視野に入れる必要がある点も似ています。
建築分野特有の違いを挙げるとすれば、建築確認や法規対応など法的制約が絡む図面があること、BIM(Building Information Modeling)の普及により3Dモデリングスキルが求められる機会が増えていることなどでしょう。
建築CADオペレーターとして成功するためのポイント
「やめとけ」と言われがちな建築CADオペレーターですが、工夫次第で安定したキャリアを築くこともできます。以下に、この職種で成功・活躍するためのポイントをまとめます。
資格取得などスキルアップを継続する
CADオペレーターは技術職です。社内研修や自己学習を通じて、新しいスキルを身につけることで市場価値を高められます。特に建築業界ではBIMや3D CADの習熟が重要です。
例えばRevitやArchicadといったBIMソフトを扱えれば、単なる2D製図だけでなく3Dモデル作成や数量拾い出しまで対応できるため重宝されます。
また、建築知識も深めておきましょう。構造や設備の基本、建築基準法の概要などを学んでおくと図面の背景理解が進み、設計者とのコミュニケーションも円滑になります。資格取得もスキル証明として有効です。CAD利用技術者試験や建築CAD検定は代表的な資格で、実務スキルのアピールになります。
また、将来的に設計に関わりたいなら二級建築士など設計系資格に挑戦するのも一つの手です。常に新しい技術動向にアンテナを張り、自己研鑽を続ける人ほど長く活躍できるでしょう。
業務の幅を広げる
単なる作図マシンに徹するのではなく、+アルファの付加価値を提供できるよう心掛けましょう。
例えば、設計者に言われた通り図面を描くだけでなく、「この納まりは施工上問題ないか」を自分でも考えて改善提案してみる、3Dパースや簡易模型を作ってプレゼン資料作成を手伝う、など設計補助以上の動きをすることでチーム内での存在感が増します。
また、複数のCADソフトを使いこなせるようになるのも強みです。AutoCADだけでなくJW-CADやVectorworks、SketchUpなど様々なソフトの操作に慣れておけば、会社や案件が変わっても柔軟に対応でき重宝されます 。
作図スピードを上げたりミスを減らす工夫(自動化ツールの活用や社内標準の整備)も評価につながるでしょう。業務範囲を広げることはそのままあなたの市場価値アップにもつながります。
働き方の選択肢を検討する
一口にCADオペレーターと言っても、様々な働き方があります。正社員として腰を据えて働く他に、派遣社員として多様な現場を経験する道や、フリーランスとして在宅で図面作成を請け負う道もあります。
厚労省のデータによれば、CADオペレーターには派遣社員やフリーランスで働く人も比較的多い職種です 。例えば子育てなどで在宅勤務を希望する場合、思い切ってフリーランスとして独立し、建築設計事務所から図面作成を受託する人もいます。
その際はこれまでの人脈や信頼がものを言いますので、在職中から取引先や同僚とのネットワークを大切にしておくと良いでしょう。一方で転職によるキャリアアップも有効です。
より大きな会社に移って年収アップを図ったり、BIM推進に積極的な企業に転職して新技術に挑戦するなど、自分の目標に合った職場を選び直すことも選択肢です。
以下の記事にまとめてあるような建築業界に特化した転職エージェントなどを利用すれば、自身のスキルに合った好条件の求人を紹介してもらえるでしょう。柔軟に働き方を選ぶことで、ワークライフバランスや収入面の不満を解消できる可能性があります。
以上のポイントを実践すれば、建築CADオペレーターとして着実にキャリアを積むことができます。特にスキルアップと業務範囲拡大は、AI時代にも生き残るためのカギです 。単なる作図要員から脱却し、「この人に任せれば安心」と思われる存在になることで、長期的な需要に応えられる人材になれるでしょう。
建築CADオペレーター「やめとけ」のまとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は建築CADオペレーターの仕事の実態、やめとけと言われる理由から成功するためのポイントまで以下の内容について説明させて頂きました。
- 建築CADオペレーターとは
- 建築CADオペレーターが「やめとけ」と言われる理由は?
- 建築CADオペレーターは本当にやめとけなのか?向いている人はどんな人?
- 建築業界と他業界のCADオペレーターの違い
- 建築CADオペレーターとして成功するためのポイント
本記事の内容を参考にそれでも建築CADオペレーターの道に進むのも良いですし、業界をずらすことで需要大で、ブルーオーシャンの場合もあります。特に今後は半導体需要は間違いないので、以下のような半導体関連のCADオペレーターも良いかもしれません。
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