モノづくりの仕事の中に生産技術という職種があります。
そもそも、いま生産技術者として働いている方や、就活や転職で生産技術職に興味がある方にとって、この仕事はどのように見えているのでしょうか?
ネット上では、生産技術の仕事は負け組だとか、きついからやめておけといったコメントを見たりしないでしょうか?
それは本当なのでしょうか?
そこで今回、現役の生産技術者の筆者が、仕事内容や、負け組・きついと言われる理由、将来性について本音で語りたいと思います。
普段は3Dモデルや2D図面作成、6軸ロボットを使った設備の構想設計といった生産技術の仕事をしている筆者が本音で語ります。
生産技術の仕事の1つであるCAMの仕事についての辛いところ、やりがいについては以下の記事を参考にして頂ければと思います。
生産技術の仕事とは?
生産技術の仕事の目的は、製作している製品の品質の維持向上しつつ、より生産性を高めることにあります。そのために下記のような仕事を行います。
- 新規設備の導入
- 既存の工程や設備の課題抽出と改善
- 新しい生産技術/計測技術の研究・開発・導入
新規設備の導入
新規設備の導入では、新規製品を製造する際に、その製品を加工・組立・測定する方法を考えます。
そして、それが可能な設備を設計もしくは購入して、現場に据付し、立ち上げていく仕事になります。
既存の工程や設備の課題抽出と改善
既存工程・設備の改善では、生産時に出てくるデータから課題点を探し出したり、現場からのヒアリングから問題点を見つけてきます。
それを分析し原因を突き止めたあと、それを解決していきます。
新しい生産技術/計測技術の研究・開発・導入
新技術の研究・開発・導入では、社内の開発から出てきた要求に対し、世の中の生産技術が適用できるか調査し、適用できれば導入し、適用できなければ開発していくことになります。
生産技術の仕事では、製品の品質、装置の稼働率、タクトタイム、歩留まり(不良率)、作業者の安全性/作業性がキーワードであり、それらを常に考えながら仕事をしていきます。
私の現在の業務だと、2つ目の既存工程・設備の改善の仕事が多く、現場から上がってきた悩みや相談事を受けて、それを解決しています。
加えて、省人化や効率化に特化した部署に所属していますので、ロボット等を用いた自動化設備やAIを用いた画像検査機を現場に導入していくような仕事をしています。
どれも一筋縄ではいかない難しい仕事ですが、非常にやりがいのある仕事だと考えています。
生産技術が負け組、きついと言われる理由
ここでは生産技術が負け組、きつい理由について、私の意見はご紹介します。
工場勤務のため、地方勤務になる
生産技術の仕事は生産現場に行かないと始まらないため、工場勤務となります。
工場は都会にあることはまれで、郊外や場合によっては山の中にあることもあります。
したがって、地方勤務になることは避けられず、都会が好きな人にとってはきついと感じることはがあるかと思います。
残業や休日出勤が多い
これについては、特に既存の工程や設備の改善に多いのですが、改善のために何かを作業するためには、製造ラインを止める必要があります。
したがって、ラインが動いていない定時後や休日に作業することが多くなることもあります。
また、新規設備の導入も、据付する際は、現在の生産の邪魔にならないように休日に作業することが多いです。
うまくいかないときのプレッシャーがきつい
生産技術の仕事は、そのまま製品の生産にダイレクトに影響します。
したがって、うまくいかない時は、お客様の要求にこたえられないことになり、会社全体のイメージダウンにつながってしまう可能性が出ます。
期限を意識しながら確実に成果を出す必要があり、上司やお客様からのプレッシャーにさらされることもあるため、きついと感じることもあります。
業務量が多く、割に合わない
生産技術の部署は人数が少ないことが多く、それに対して工程や設備は山ほどあります。
一人に対して与えられるタスクは多くなるため業務量が多く、仕事に追われている人をよく見かけます。割に合わないと感じるかもしれません。
設計や開発と比べると地味なイメージがある
エンジニアの花形は設計や開発だと考えている人が多いです。
確かに、子どもに将来の夢を聞いたときに、設計者や開発者になりたいという人がいますが、生産技術者になりたいという人は聞いたことがありません。
社会にあまり認知されていませんし、周りからどんな仕事をしているか訊ねられてもうまく答えられず、理解してもらえないことが多いです。
一人前になるには多くの経験と知識が必要
生産技術者は非常に多くの種類の設備や機器を扱う必要があります。
また、問題が発生したときに過去の経験があるかないかでは、対応に大きな差が生じます。
品質や工程能力に対しての知識も必要ですし、装置を導入するにしても図面の読み書きが必要です。
新入社員が一人前になるまでにそれなりの時間を要するのは間違いありません。
出世しにくいといわれている
ネットには出世しにくいとの情報がよく上がっていますが、私はそう思いません。
現に私の会社の社長は生産技術者です。生産技術は生産に直結することで責任が伴う反面、うまくいったときには大きな成果になります。
それに、現場を知っている人間を出世させたいと考えている経営者も多いと思います。
会社によって考え方は違うかもしれませんが、生産技術者は出世しにくいとは言えません。
生産技術の仕事が向いている人
今までの話を踏まえて、生産技術の仕事に向いている人の特徴を下記のように考えています。
現場の人間と良い関係性を築ける人
生産技術の仕事は、現場の方の協力なしでは行えません。
新しく生産技術の部署に配属されたときにまずやることは、現場のおじさんと仲良くなることです。それだけで仕事のやりやすさが段違いになります。
現場の悩みや相談事も聞き取りやすくなりますし、頼み事も聞いてもらいやすくなります。
現場の人はどうしても今の生産が優先ですので、こちら側からの要求は後回しになりがちです。しっかりコミュニケーションをとって味方になってもらいましょう。
観察力を持っている人
現場を観察することは非常に大切な作業です。
視覚・聴覚・嗅覚・触覚をフル活用することで、現場の問題点に気づくことができます。
現場の人は毎日そこにいるためわかりませんが、普段はそこにいない人間の方が気づくことも往々にしてあります。
現場で気づいたちょっとした変化点や気づきが大きな成果につながることも多いです。
情報収集能力が高い人
生産技術の人が扱う設備や機器は多岐にわたっており、新しい技術も日々更新されていきます。
昨日できなかったことが今日できるようになっている可能性もあるのです。
また、自分が担当している分野以外の物についても自分の分野に転用できる可能性があります。
日頃から情報収集する癖をつけておくことは大切なことです。
製造・設計・開発と幅広い経験を持っている人
生産技術には前述の通り幅広い経験や知識が必要です。
様々なバックグラウンドを持った人間がいると、仕事が進みやすくなります。
さらに、一人で幅広い経験を持っていれば、仕事で困ることは少なくなります。
生産技術では、仕事を少人数で進めることも多く、忙しくて他のメンバーの意見を聞けない場合もあるため、経験があるほど有利になります。
あきらめない心持っている人
最後に、これが一番大事です。生産技術の仕事では、新しい技術や設備を導入してきますが、一筋縄ですんなりとプロジェクトが完了することは稀です。
何かしらの壁にぶつかり、苦労することが多く、精神力を必要とする場面が来ます。
その代わり、達成したときの喜びは大きなものになりますので、最後まであきらめずに仕事に取り組んでもらえたらと思います。
生産技術の将来性
製造業がある限り、生産技術の仕事はなくなることはありません。
また、近年は少子高齢化の影響で生産年齢人口が減少してきています。
これまで以上に省人化、効率化が必要とされる時代になっていますので、生産技術の仕事はさらに重要なものになってきています。
最近は、協働ロボットやAI、IoTやDXといった新しい技術も発展していますので、これらをうまく使えば、さらなる成果を生み出すことができると思います。
生産技術者におすすめの転職エージェント
いままでは生産技術のマイナス面、プラス面を見てきました。
ここまでを読んだうえで、生産技術の仕事に就きたい人、辞めたい人、それぞれいらっしゃると思います。
どちらのケースにおいても今、社会人の方にとっては転職をする必要が出てきます。
そんな時、転職者の強力な味方になってくれるのが転職エージェントです。
ただ日本にはたくさん転職エージェントがあってどれが良いのか分からないですよね?
そこで筆者がおすすめするのがモノづくり業界に強い転職エージェントを選ぶことです。
転職エージェントに自分の今までの仕事内容を理解してもらうことができれば、自分に合った企業を紹介してもらえ、転職を成功に導く可能性が高くなります。
以下にモノづくり業界に強い転職エージェントをまとめてありますので参考にして頂ければと思います。
まとめ
生産技術者は負け組であるとか、仕事がきついといった意見がネット上に上がっており、実際に指摘通りの内容もあります。
しかし、大変なことがある反面やりがいがある仕事であることは間違いありません。
製造業を支えているのは現場の作業者であり、その作業者を支えているのは生産技術者です。
すでに生産技術の仕事をされている方は誇りに思っていただき、これから生産技術の職に就かれる方も、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
コメント