モノづくりに欠かせないツールになっている3DCADですが、最近は会社だけでなく、個人でも自宅などで使うケースも増えています。
3DCADを使った3Dモデル製作の副業や、趣味への活用などが増えているのも一つの理由です。
いざパソコン購入を検討する際に困るのが、3DCAD用のパソコンがたくさんあって、どれを買えば良いか分からない!というものです。
3DCADを使うのが慣れていても、パソコンの性能や詳しい名称は意外と知らない人も多いと思います。
そこで、今回は3DCAD用パソコンの選び方や、おすすめについて、デジタルエンジニアリング歴20年以上の筆者がご紹介します。
ノートパソコンについてはこちらの記事を参考にしていただければと思います。
Fusion360のおすすめパソコンについてはこちら
3DCAD用パソコンの選び方や必要スペックは?
代表的な3DCADには以下のようなものがあります。
- CATIA
- NX
- Creo
- Fusion360
- Solidworks
- Solidedge
- AutoCAD Revit
- ArchiCAD
- Vectorworks
まず、3DCAD用パソコンは2DCADより高性能が必要になってきます。
それは複雑形状の表現、フィーチャの履歴再生、R処理といった複雑な演算処理、アセンブリなどの大規模データの処理などが必要なためです。
こういった高性能パソコンはワークステーションと呼ばれ、一般のパソコンに比べて画像を鮮明に写したり、データの処理能力が高いのが特徴です。
高性能と言われるゆえんには以下のようなパソコンの各部品が必要なスペックである必要があります。
ここが、3DCAD用パソコンの選び方で重要なポイントです。
- CPU
- グラフィックボード
- メモリ
- ストレージ
- 画面サイズ
また各部品が3DCADのパフォーマンスに与える影響度は以下の順です。
CPU ≧ グラフィックボード > メモリ > ストレージ
ただ、正直なところ、どの部品にどれぐらいのスペックが必要なのか分かりづらいですよね?
でも大丈夫です。一つずつ確認していきましょう。
CPU
CPUは人間でいう脳に値するところなので、高性能なものを選ばないとパソコンの処理が遅くなってしまいます。
3DCADをどのように使うかにもよって、選ぶCPUも変わってきます。
普通のモデリングで、形状作成や編集程度でしたら、CPUはIntelであれば、Corei5以上、AMDであればRyzen5以上にしましょう。
ただ、レンダリングやCAEなどのシミュレーションもやるというのであれば、Intelであれば、Corei7以上、AMDであればRyzen7以上にしましょう。
ちなみに、CPUの性能を示す数値として、クロック数とコア数というのがあります。
クロック数は、クロック周波数とも呼ばれ、CPUが処理する速さで、クロック数が大きいほど、CPUが同じ時間内で多くのことを処理できます。
例えば、3DCAD内での形状編集や、データの読み書きにダイレクトに影響してくるスペックです。
コア数は、マルチコアプロセッサーというのを聞いたことがあるかもしれませんが、CPUの中にいくつのコアがあるかを表しており、コア数が多いほど同時に複数の処理を行うことができます。
ただし、ほとんどの3DCADは、モデリングのコマンドを実行する際、同時に複数の処理をするのではなく、一つずつ処理をしていくので、現段階ではコア数は影響しません。
逆にレンダリングや、形状変更しながらCAEやCAMの計算を同時並行にやりたい場合は、コア数が多い方が有利です。
最初にご紹介したCorei5、Ryzen5にはそれぞれクロック数、コア数が違う商品がありますので、その中のいくつかを下表で比較しておきました。
これを見るとクロック数とコア数の違いも何となく理解できると思います。
当たり前ですが、最近の商品になるほど、またクロック数やコア数が大きいほど値段も高くなります。
CPU商品名 | クロック数 | コア数(スレッド数) | 価格(円) |
Core i5-12400F | 2.50GHz(65W) | 6(12) | 約23000 |
Core i7-12700 | 2.10GHz(65W) | 12(20) | 約44000 |
Ryzen5 3600XT | 3.80GHz(95W) | 6(12) | 約30000 |
Ryzen7 3700X | 3.60GHz(65W) | 8(16) | 約45000 |
グラフィックボード
グラフィックボードは画面に3Dモデルなどの映像を映すための部品です。
このグラフィックボードのメーカーで有名なのが、NVIDIA社とAMD社です。
各社とも色んな商品がありますが、3DCADに適したものは以下の3つです。
- NVIDIA製 Quadroシリーズ
- NVIDIA製 RTX Aシリーズ(Quadroシリーズの上位機種)
- NVIDIA製 GeForceシリーズ
- AMD製 RadeoProシリーズ
上記の中でも、3DCADのソフトによっては、OpenGL(Open Graphics Library)といって、3Dモデルの演算や描画を支援するプログラムを備える標準規格を指定している場合もあります。
その場合はNVIDIA製 QuadroシリーズとRTX Aシリーズを選択するのが良いです。
以下にそれぞれのシリーズの機種比較を載せておきます。
ここで出てくるCUDAコア数とグラフィックメモリーはグラフィックカードの性能を示す数値で高い方が一般的に高性能になります。
RTXシリーズ | CUDAコア数 | グラフィックメモリー(GB) |
---|---|---|
NVIDIA RTX A6000 | 10752 | 48 |
NVIDIA RTX A5000 | 8192 | 24 |
NVIDIA RTX A4500 | 7168 | 20 |
NVIDIA RTX A4000 | 6144 | 16 |
NVIDIA RTX A2000 | 3328 | 6 |
NVIDIA T1000 | 896 | 8 or 4 |
NVIDIA T600 | 640 | 4 |
NVIDIA T500 | 384 | 4 or 2 |
Quadroシリーズ | CUDAコア数 | グラフィックメモリー(GB) |
---|---|---|
Quadro RTX8000 | 4608 | 48 |
Quadro RTX6000 | 4608 | 24 |
Quadro RTX5000 | 3072 | 16 |
Quadro RTX4000 | 2304 | 8 |
Quadro T2200 | 1280 | 5 |
Quadro T1000 | 640 | 4 |
Quadro P620 | 512 | 2 |
Quadro P400 | 256 | 2 |
色々と書きましたが、どれを選べば良いか?というと、レンダリングなどをするのならNVIDIA RTX A2000以上、大規模データを使ってシミュレーションをやる場合は、RTX A4000以上といった感じです。
モデリングだけをやる場合は、NVIDIA T1000で問題ないといった感じです。
NVIDIA製 Quadroシリーズ、NVIDIA製 RTX Aシリーズ、NVIDIA製 GeForceシリーズそれぞれのスペックの違いについては、NVIDIA社の公式ホームページも参考にしていただければと思います。
NVIDIA製 Quadroシリーズ、RTX Aシリーズのスペック(公式ホームページ)
NVIDIA製 GeForceシリーズのスペック(公式ホームページ)
メモリ
メモリは、パソコンが処理をするときに一時的に記録する場所です。
ストレージとの違いでよくたとえられるのは、
ストレージ・・・書物をため込む本棚
メモリ・・・作業をするための机
という例が挙げられますね。
机が大きければ大きいほど、たくさんの情報を一気に処理することができますよね。
それと同じでメモリも大きければ大きいほどパソコンが大きなデータを効率よく処理することができます。
3DCADを行う上では、16GB以上のものを選びましょう。
32GBあるとなおいいですが、メモリスロットに後からメモリを追加、入れ替えることで増設することができます。
ストレージ
ストレージとは、3DCADで作成したデータを保存しておく場所です。
HDDとSSDがありますが、SSDの方が、データの読み込み、書き込みのスピードが速く、パソコンの起動も早いです。
ストレージが足りなくなれば外付けのHDDを買えば良いです。
画面サイズ
画面サイズは、パソコンの性能には関係してこないですが、やはり画面が大きい方が作業効率があがりますので、パソコン購入時に気にしておくことです。
ずばり、画面サイズは24インチがお薦めです。
最近はデュアルディスプレイといって、ディスプレイを2つ並べたりするとより使い易いです。
3DCADモデリング用パソコンの各部品スペックまとめ
ここで、上記で説明してきた3DCAD用パソコンの各部品のスペックをまとめておきましょう。
部品 | スペック |
CPU | Corei5以上 or Ryzen5以上 |
グラフィックボード | NVIDIA製 RTX AシリーズorNVIDIA製 Quadroシリーズ |
メモリ | 16GB以上 |
ストレージ | SSD |
画面サイズ | 24インチ |
それでは、上記の必要スペックを踏まえて3DCAD用おすすめパソコンをご紹介していきます。
3DCADモデリング用パソコンの値段は?
必要なパソコンのスペックが分かったところで、次は価格です。
いったい3DCAD用パソコンはいくらぐらいの予算を考えておけば良いでしょうか?
結論から言うと、だいたい20~30万ぐらいが相場と思っておけば良いでしょう。
もちろん中古ならもっと安くはなります。予算的に厳しい場合は中古で買うのも手です。
中古購入のおすすめショップなどは後でご紹介しますね。
また最初の一台目はノートパソコンでなくデスクトップパソコンをおすすめします。
理由は、デスクトップパソコンの方が、CPUやグラフィックボード、メモリなどを高性能なものに交換が容易なためです。
ノートパソコンの場合、こういった拡張性に欠けるので、1台目としてはおすすめしません。
最初は安めのデスクトップパソコンを購入しておき、モデリングの内容に応じて各部品を高性能なものに交換していくのでも良いでしょう。
3DCADを買うならBTOメーカーがおすすめ
皆さん、BTOメーカーはご存知でしょうか?
BTOとはBuild To Orderの略で、オーダーメイドのパソコンを買うことができます。
オーダーメイドというと、特別で高いというイメージを持つかもしれませんが、その逆なんです!
そう、安いのです。どうしてか?
パソコンメーカーというと大手のDELLやHPをイメージするかもしれませんが、大手というと人件費や広告宣伝費が掛かっているので、どうしても価格が割高になってしまいます。
それ比べてBTOメーカーは、特定の分野、例えばゲームやCAD向けで勝負し、広告宣伝費もそれほどかけないため名前はあまり知られていませんが、その分、安くパソコンを提供できるのです。
CAD向けで、国内の代表的なBTOメーカーには以下のようなところがあります。
次では、それぞれのBTOメーカーで3DCAD用のおすすめデスクトップパソコンをご紹介します。
3DCADモデリング用おすすめデスクトップパソコン10選
それでは、3DCADモデリングにおすすめのデスクトップパソコン7選をご紹介します。
今までご紹介した3DCADモデリングに必要な各部品のスペックやBTOパソコンメーカーの中から選んでみました。
売り切れている場合や、自分で納得した部品で自作したい場合などは、BTOパソコンメーカーで好きな部品を購入し、組み立てることも可能です。
ツクモ
商品名 | 画像 | CPU | グラフィックボード | メモリ | ストレージ | 価格(円) | 備考 |
QA7J-D230/ZB | Corei7-13700KF | NVIDIA T1000 | 16GB | 1TB SSD | 227,800 | ・グラフィックボード選べる ・キーボード、ディスプレイ別売 | |
QA9J-H222/XB2 | Corei9-10900X | NVIDIA T1000 | 32GB | 1TB SSD | 289,800 | ||
QM5J-B222/B2 | Core i5-12400 | NVIDIA T1000 | 16GB | 500GB SSD | 149,800 |
レノボ
商品名 | 画像 | CPU | グラフィックボード | メモリ | ストレージ | 価格(円) | 備考 |
ThinkStation P360 Tiny | Core™ i3-12100T | NVIDIA T400 | 8GB | 256GB SSD | 168,014 | ・グラフィックボード選べる ・ディスプレイ別売 | |
ThinkStation P360 Tower | Core i7-12700K | NVIDIA T400 | 16GB | 512GB SSD | 248,600 |
Sycom
商品名 | 画像 | CPU | グラフィックボード | メモリ | ストレージ | 価格(円) | 備考 |
Lepton WS3500Z790-A/D5 | Core i7-12700K | NVIDIA T400 | 16GB | 500GB SSD | 207,900 | ・CPU、グラフィックボード選べる ・キーボード、ディスプレイ別売 |
3DCADモデリング用パソコンを中古で買う
いままでは新品のパソコンをご紹介しましたが、そこまではお金が出せないという場合は、中古という手もあります。
そういう時は大手のショップを選ぶのが断然良いです。理由は以下です。
- 整備がいきとどいている
- 在庫が豊富
- 中古でも保証期間がある
おすすめの中古ショップは、TOKAIZ STOREやアマゾンや楽天で探すことです。
アマゾンや楽天で売られている中古ショップも大手が多いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は3DCADのモデリングに特化したデスクトップパソコンのおすすめをご紹介しました。
パソコン技術は日進月歩なので、適宜、最新情報に更新していきたいと思います。
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