今後、建築業界で必要不可欠になっていくBIMですが、その普及も少しずつ進んでいるようです。
これに伴いBIMオペレーターの数も増えていますが、仕事の中ではつらく、大変なこともあるようです。
今回は現役のBIMオペレーター3人の方に、つらいこと、大変なこと、その対処方法について実態を語ってもらいました。
大手ハウスメーカーBIM設計者(32歳)の経験談
大手のハウスメーカーで正社員として設計の仕事をしている男性(32歳)です。
建築士の免許を持っていますが、最近は、設計にCADやBIMのスキルは必要不可欠になりました。
私の仕事は、戸建て住宅を建てる際に、施工主との打ち合わせに立ち合いヒアリングをして、施工主が望む家を設計することです。
BIMを使用して3Dモデルを作成し施工主にわかりやすくデザインを提供しています。
BIMソフトはグラフィソフト社のArchicadを使用しています。
BIMソフトの操作方法を覚えるのが大変
今はすっかりと慣れましたが、入社直後はBIMソフトの操作方法を覚えるのがとても大変でした。
最初は、ラインを描画するなど、基本的なところからわからなかったのでとても苦労しました。
また、BIMへの移行期は2次元図面を3D化する必要があったのですが、図面と3Dモデルのつじつまが合わず、思い通りにならないところが一番苦労しました。
一連の作業を繰り返し経験することで、最終的な3Dデータをイメージしながら設計できるようになりだんだんとなれていきました。
対処方法は、とにかくBIMソフトを使い倒し、慣れるしかないのですが、今は大学や専門学校でもBIMソフトの授業があると思うので、それをしっかりと受けることが重要だと思います。
肩こり、目の疲れ、倦怠感が辛い
私は右利きなので右手で細かいマウス操作をするため、右肩が異常に凝るところが辛いです。
時々、もうこれ以上作業できないと思えるほど痛いこともあります。
そして、長い間パソコンの前にいるため、目が疲れるとともに体がだるくなることもあります。
- 30分~1時間に一度ストレッチをする(タイマーをかけておくと良い)
- 定期的に遠くを見る
- 長時間作業用の40%以上ブルーライトカットの眼鏡にする
- パソコンにブルーライトカットフィルムを付ける
もうこればかりは現代病といっても過言ではないでしょう。
VDT(Visual Display Terminals)作業に対する影響を軽減できるように上手く付き合っていくしかないのです。
マシントラブルでデータ消失
最もイライラすることはマシントラブルが時々あることです。
データが重くなりソフトのレスポンスが遅くなることも耐えられませんが、稀にソフト自体がシステムダウンしてしまい、せっかく設計したデータを失ってしまうこともあります。
基本的にBIMデータはクラウドサーバーで一元管理していいますが、データの保管はリアルタイムではなく、突然システムがダウンすると、最悪1時間前のデータしか保管されておらず、1時間分の作業が無駄になることがあります。
マシントラブルについては、システムのOSを常に最新にすることと、ローカルのマシンに設計データを置かないようにして、ローカルマシンのHDDの空き容量を常に大きくするようにしています。
また、いつマシントラブルに遭遇するかわからないため、こまめなデータのバックアップもしています。
もちろん、BIMソフトの更新状況もこまめに確認して常に最新バージョンを使うようにしています。
施工主の要望がころころ変わる
施工主に3Dモデルを見せると、要望と異なると言われることがあります。
施工主と3Dモデルを定期的に共有することで要望のずれをなくすことが極力できますが、施工主によっては、忙しくてマメに会えない人もいます。
また、インターネット環境を持っていない人もいますので、メールなどでのデータ共有が不可能なこともあります。
そのため、せっかく作ったデータを、たとえば1週間後などに施工主様からNGを言われると、設計のやり直しになってしまい、精神的にもダメージを受けるのです。
施工主とのやり取りについては、最初の打ち合わせの時に、その場でイラストを描くなどしてこまめに要望を確認するようにしています。
実際に画にして説明すると意見の食い違いも発生しにくくなりました。
将来的には、クラウド上に3Dデータをアップし、そのデータを施工主がスマホにインストールされたビューワなどを使ってデータ確認できるようにしたいと思っています。
フリーランスとしてBIMを使った設計業務(50歳)
フリーランスとしてRevitを活用したBIM設計を行っている男性(50歳)です。
住宅やオフィス等の案件で、3Dによる設計・プレゼンツール(物件紹介や住民設計)としてのBIM活用が中心です。
たまに設備設計や構造解析を行ったりします。
尺モジュール(伝統的な 910mm×910mm[半間×半間]を基準とした設計手法)で、BIMモデリングできる作業環境が整ってからは、Revitが設計・デザインの軸となり、そこから、AutoCAD や Illustrator にデータを引き継ぎ、最終納品物としての仕上げを行っています。
従来は、平面図→立面図→パースという流れで設計を進めることが多かったのですが、BIMが導入されてからは、3次元で、まず建物をモデリングし、色々な角度から検証し納得してから、図面として平面図や立面図を作図するため、設計業務の出戻りは少なくなりました。
BIMの自己学習環境が整っていない
BIMオペは、まだ自己学習教材が少なく、CADスクールのようなスキルアップの場も少ないのが現状です。
動画サイトも含めて、色々なネット情報から有益な情報は得られるようにはなりましたが、断片的な情報や、ご自身の備忘録、自己表現など、体系的に実務のノウハウを取りまとめたものは、残念ながら少ないのではないでしょうか?
かつてのCAD教材・CAD教育環境の普及の歴史を振り返っても、AutoCADで実務に携わっている人の有益なノウハウが文献で公開されたのは、ようやく令和に入ってからのことと思います。
早い時期から、Autodesk社のオフィシャルマニュアルが出版され、改訂を重ねてこられたのですが、3Dモデリングに関しては、オフィシャルマニュアルを丸暗記しても、現場では不十分なのが実情でした。
したがって、現時点のBIMオペのスキルアップ手段としては、日々の情報収集、トライ&エラーの繰り返ししかないと思っています。
各人の日々の意識の向上や、自己研鑽によらざるを得ないと思います。
以下の記事にBIMの独学方法、おすすめ資格、スクールなどもまとめてありますので参考にしていただければと思います。
海外からの情報収集のため英語スキルが必要
積極的にスキルアップしようと思うと、日本国内の情報だけでは不十分で海外のサイトやフォーラムで情報収集しなければなりません。
したがって、それほど高いスキルレベルはなくとも、簡単な英語の読解力がマスト条件として要求される場面があります。
今は手書き図面からCAD図面への移行し始めた時代と同じような途上の段階にあり、現在のBIMオペは、将来の草分けとしての役割を担うことも求められていると感じています。
中小企業ではまだBIMが普及されていない
BIMという概念がスーパーゼネコンや大手設計事務所のみが取り扱う、敷居が高いツールのように思われていることで、中小・零細企業には、あまり普及していない現状があります。
これによりBIMオペのスキルがCADオペほどには評価されずらいというのが実感です。
今はCADからBIMへの過渡期なので、まだまだCADオペが重宝されやすいのかもしれませんが、これは時間が解決すると思っています。
日本政府が23年(コロナにより2年前倒し)までに完全BIM化を目標に掲げていますので、今後はBIMオペの求人が激増すると予想しています。
ゼネコンがBIMデータ提出を取引条件にした際、淘汰される中小企業は問題なので、今のうちから準備をする必要があるのです。
現に、求人を見てみても採用したあかつきにはBIMも教えますというふれこみで求人している案件を多く見ます。
BIMオペレーター正社員(36歳)
建築業界で正社員としてBIMオペレーターをしている男性(36歳)です。
納期に間に合うように、建築物の図面を作成して、上司に提出し、修正点を指摘され、修正作業して、また上司に見てもらうといったことの繰り返しです。
上司に承認されると作成した図面が現場に行くのですが、また次の現場の建築物の図面を作成するといった感じです。
使用しているBIMソフトは「アーキキャド」です。
細かい作業を続ける高い集中力が必要
BIMオペレーター特有の辛い作業としては、建築物の設計に携わることが多いので、長時間連続して同じ作業になり、精神的にまいってくることもよくあります。
形を決めながらの作業であれば単調作業ではないのですが、コストなど属性情報の入力は情報の転記になることが多く、単調作業と言わざるを得ません。
できるだけ単調作業を長時間やらないように、考える作業とのバランスを取りながら、気分をリフレッシュしながらやるようにしています。
質問などコミュニケーション能力必要
モデル作成時に分からないことが出てきた場合にはすぐに責任者や設計士に質問をしなくてはいけません。
責任者も設計者も忙しい場合が多いので、質問するタイミングを逸すると、納期に間に合わなくなってしまいます。
そこで分からないところを相手に伝わりやすく事前準備し、画面を見ながら、一回のコミュニケーションで疑問が解決するようにします。
したがって、コミュニケーション能力がある程度ないと辛い部分があります。
パソコン画面による目の疲れ、腱鞘炎、腰の痛み
BIMオペレーターの仕事について辛いことは、「1日中ずっとパソコンとにらめっこしている」ことです。
朝パソコンの前に座って、パソコン画面とにらめっこしていると、気が付けば昼になっていたり、終業時間になっていたりすることがよくあります。
細かい作業が多いと、仕事が終わった時には、目も神経も疲れ切っています。
目は慢性化してドライアイになっていますし、手もマウスをずっと握っているため、手首を痛めて腱鞘炎になっています。
長時間座りっぱなしなので腰も痛く、椅子から立ち上がるのも時間をかけて立ち上がらないと痛くて立てないということもしばしばあります。
BIMオペレーターは、気を付けていないと、身体が悲鳴を上げてしまう仕事だと思っています。
対処方法としては、集中しすぎず、アラームなどを1時間ごとにかけて、パソコンの前から離れて、ぶらぶらと廊下を歩いたり、ラジオ体操をしたりしています。
それだけでも、目が休まり、身体もスッキリするので、もう一度集中して仕事に取り組むことができます。
とにかく集中し過ぎないことがBIMオペレーターには大事だと感じています。
あとは、仕事以外の時は「しっかりと休む」ことが大事です。
家に仕事を持ち帰ってやるなんてことをしたら、後々身体に負担がかかってくるので、自分はしないようにしています。
仕事帰りにジムに行って汗をかき、リフレッシュしたりもしています。
BIMオペレーターの将来性
今まではBIMオペのマイナス面を見てきましたが、前述した通り政府方針もあり将来性は確実視されていると思います。
BIMオペの将来性や仕事内容の詳細、年収などについては以下の記事を参考にしていただければと思います。
BIMの政府の推進により転職サイトにはBIMの案件が多いです。
年齢にもよりますが未経験でも採用し社内研修でスキルアップしてもらう企業もあります。
転職はタイミングが命でもありますし、まずは転職サイトに登録するところからスタートを切る事をおすすめします。
以下はBIM案件に強い転職サイトのランキングなので参考にして頂ければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、BIMオペレーターのつらいこと、大変なこと、その対処方法をまとめてみました。
やはりVDT作業でもあるので、以下のようなCADオペレーターと似た部分があった印象です。
ただ、建造物を作るというやりがいもあるのは確かなところ。
今後、間違いなく需要が拡大していくので、上手くやりくりしながら続けていきたいものです。
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