建築業界では、BIM(Building Information Modeling)が急速に普及しています。
BIMソフトについても様々な種類のものがありますが、今回は、意匠設計で利用されることの多いArchicad(アーキキャド)について、概要とその特徴について、自身も建築設計事務所でアーキキャドの展開・推進をしている筆者が解説していきたいと思います。
BIMというともう一つ有名なソフトにRevitがあります。ArchiCADとRevitの違いを知りたい場合は以下の記事がおすすめです。
そもそもBIMと3DCADの違いを知りたい場合は以下の記事を参考にしていただければと思います。
アーキキャドの基本を理解しよう
アーキキャドとは?ソフトウェアの基本概要
アーキキャドは、ハンガリーのGraphisoft社が開発したBIMソフトです。
直感的な操作性と自由度の高い設計が可能なことで評価されています。
歴史も古いソフトで1980年代から開発が進み、日本に導入されたのは1994年頃と既に30年近くも実績のあるBIMソフトになります。
主な機能としては、プロジェクトや必要な情報の登録、建物のモデリング、モデルの図面化、建物の各部材や仕上情報の入力、パースの作成等があります。
アーキキャドの特徴と他のBIMソフトとの違い
アーキキャドは、レイヤー機能やペン設定、重ね合わせ等の図面表現がしやすいという特徴があります。
ゾーンと呼ばれる空間に属性を付与する機能も装備しており、ボリューム検討からプレゼン図面への着色や部屋用途の区分まで、アレンジの幅が広いです。
意匠設計事務所での導入が進んでいる傾向があり、図面の表現への拡張性やプレゼン等で利用する際に利用しやすい部分が理由だと考えられます。
図面の管理もしやすく、確認申請用・社内検討用・見積作成用等で数種類の図面作成を行う際に、見やすく整理がしやすいことも特徴の一つです。
アーキキャド初心者が知っておきたい5つの基本機能
各操作のインターフェース
まずはアーキキャドを開いた際に表示される画面について、主要部分についての概要と特徴をご紹介いたします。
モデル・図面作成画面(ビュー)
メインとなるモデルや図面が表示される部分になります。
基本的には画面の中央にされ、作業のメイン画面になります。
同じモデルや図面の表示でも、レイヤや重ね合わせ等の機能を利用することで様々な表現ができます。
最終的に出力する際の表現は別と考えて、モデルが確認しやすく、分かりやすい表示を意識していくと作業がしやすいでしょう。
ツールボックス
主にモデル作成に利用されるツールを選択することができます。
基本的には画面の左側に配置され、壁や扉のイラストが入っている部分を選択することで、モデル空間や図面を編集していきます。
モデル作成の初期は特に利用することが多い部分になります。
ナビゲータ
主に作成したモデルの場所や図面を選択することで、画面に表示することができます。
基本的には画面の右側に配置され、モデルの平面・立面・断面や表関係への画面切り替えができます。
ナビゲータの中でも「プロジェクト一覧」、「ビュー一覧」、「レイアウトブック」「発行セット」が分かれており、タブでの切り替えが可能です。
モデル作成初期で各階の平面や断面を確認したい場合は、「プロジェクト一覧」、モデルがある程度できてきた段階で図面化していく場合は、ビュー一覧」、「レイアウトブック」、最終的な図面の出力や2DCADに変換する際には、「発行セット」を利用するイメージを持つと分かりやすいかもしれません。
基本設定
通常の2DCADのようにアーキキャドでも様々な設定を行うことが可能です。
建物モデルの作成や情報は、毎回異なることが多いと考えられますが、モデルに利用する部材や仕上、ペン設定や図面枠等はプロジェクトで共通するものを設定しておくと効率化に繋がるでしょう。
品質の担保やミス防止にもなるので、社内や自身での標準を定めておくと良いかもしれません。
3Dモデリング
アーキキャドではパソコン上で3Dモデリングを行うことができます。
作業をする上で多くの時間がかかりますが、BIMのメイン部分で重要なポイントとなります。
通常の3Dモデリングとは異なり、作成したモデルに部材の属性が付与される点も大きな特徴です。
図面ツール
作成した3Dモデルから図面を作成することができます。
目的に合わせて表現を変えることもできるため、様々なアレンジができます。
同じ平面図でも着色等を行うことで部屋用途、空調有無、上下足等のエリア分けを異なる図面として表現できます。
また、目的に応じて、出力する図面のセットを作成することができるため、図面管理も行うことができます。
レンダリング
作成した3Dモデルを利用し、レンダリングを行うことでパースを作成することができます。
他のレンダリングソフトを利用することもでき、パースの品質を上げることも可能です。
プレゼンや関係者間での合意形成に有効な機能となります。
アーキキャドの勉強方法
無料版、体験版の活用
アーキキャドの2種類の無料ライセンス
- 学生・教員は 1年間の無料ライセンスあり
- 商用向けライセンスは30日間の無料ライセンスあり
アーキキャドは、体験版ライセンスを取得することで、30日間無料で体験することが可能です。
また、教育版ライセンスも提供されており、学生や教員、教育機関の方々は無償でアーキキャドの教育版ライセンスを利用することができます。
試しにアーキキャドを使ってみたい方や学生・教員の方は、利用を検討してみても良いかもしれません。
アーキキャドの体験版は以下からダウンロードできます。
資格取得
アーキキャドに関する資格には、Archicad BIM User認定試験、Archicad BIM Author認定試験、Archicad BIMマネージャー認定等があります。
自身のアーキキャドとの関わり方と必要に応じて、取得を検討してみましょう。
その他、最近ではBIMの普及に伴い様々なBIMの資格が誕生しています。
BIMの各資格については以下の記事も参考にして頂ければと思います。


スクールに通う
アーキキャドについて、体系的に学びたい方はスクールに通うのも良いかもしれません。
アーキキャドを取り扱っているスクールはいくつかあり、開発元のGraphisoft社でもオンラインセミナー等を開催しているので、自身の学習スタイルや予算に合わせて検討してみましょう。
アーキキャドを学べるスクールで有名なところで言うとWinスクールがあります。
アーキキャドとアーキトレンドとの違い
「アーキキャド」と似た名称のソフトに「アーキトレンド」というソフトがあります。
これらは、名称は似ていますが、全く異なるソフトになります。
アーキトレンドは、福井コンピュータアーキテクト社が開発・販売しているソフトとなります。
BIMの概念を持つCADとして主に住宅設計に利用されているソフトになります。
間取りからの3Dモデル自動作成や日本の法規制への対応等が強みです。
間取りのプランニングや建材の選定の際には、一般のCADやBIMソフトと比べてブロックを組み合わせるイメージで作成することができます。
木造の住宅には「アーキトレンド」、大規模、自由度の高い建物には「アーキキャド」等、目的に応じて選びましょう。
建築業界ではBIMオペレーターの需要が増えている
これは建築業界だけでなく、機械などの業界でも言えるのですが、今後はCADなどの3Dデータに様々な情報が付与され、それをソフトや機械が読み、モノづくりに関する様々な作業を自動化していく流れにあります。
そういった3Dデータ+情報付与は今までの図面作成より時間はかかるものの、後々を考えるとデータアセットとして有効活用できるので、どの企業でもその流れになっています。
機械やソフトが読めるデータになることでデータアセットとしての価値が増し、人間だけが読めるだけのデータでは時代遅れになっていくことでしょう。
ただそういった3Dデータに各種情報を付与するBIMデータの作成は建築設計者には負担になるので、そこでBIMオペレーターが必要というわけです。
したがって、今後ますますBIMオペレーターの需要は増えていくでしょう。
もしあなたがCADしか使えないとしたら、将来に向けてBIMを勉強し、BIMオペレーターとしてキャリアをスタートさせた方が良いでしょう。
今なら、BIMが使えなくても就職後に研修などで習得させてくれる企業もあります。
以下の記事でご紹介しているようなBIMオペレーターに強い転職エージェントにそういった企業を紹介してもらい、転職することも視野に入れた方が良いでしょう。
転職は勇気がいることです。なのですぐに転職しなくとも、まずは転職エージェントに登録しながら仮の転職活動(ゆる転職活動)をしてみることをオススメします。
転職エージェントへの登録は無料ですよ♪
まとめ
今回は、BIMソフトの中でも意匠設計事務所で利用されることの多い「アーキキャド」について解説しました。
急速に普及が進んでいるBIMですが、利用できる人材が少ないということが大きな課題になっています。
アーキキャドについても同様に導入している企業は多いですが、人材は十分ではないことがほとんどでしょう。
特徴や機能を理解することは簡単ではありませんが、全体的なイメージを持つことで、その後の理解度も大きく変化すると思います。
自分に求められるものや自分とBIMの関わり方についてみつめなおすことで、各々に必要なものが見えてくるかもしれません。
今回の記事内容をまとめると以下です。
- アーキキャドは直感的な操作性と自由度の高い設計が可能なBIMソフト
- アーキキャド初心者が知っておきたい5つの基本機能は、インターフェース、基本設定、3Dモデリング機能、図面機能、レンダリング
- アーキキャドの勉強方法は無料版の活用の他、スクールや資格取得も検討しよう
- アーキキャドとアーキトレンドは全く別のソフト
- BIMオペレーターとして転職するなら今がチャンス!
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