BIM、ビルディング・インフォメーション・モデリング(Building Information Modeling)は近年、建設業界や設計業界で注目を集めているITを駆使した3次元設計ツールです。
まだ日本にはBIMを使いこなせる人材が不足しており、それだけに今、身に付けておくことで先行者利益を得られるというか、行列の先の方に並べるわけです。
これに比べてCADオペレーターはかなり増えており、希少価値は少なくなってきていると言えます。
そんな中BIMの仕事をしてみたい、オペレーターになりたいけどどうしたらいいか分からない、CADは知っているけどBIMも勉強してみたい・・・そんな人のために、独学方法などをご紹介したいと思います。

BIMの勉強をするなら今がチャンス!ここでは色んな勉強法をご紹介します。
BIMとは?
日本で主に使われているBIMの種類
普通の3次元CADとの大きな違いは、作成時に使用するオブジェクトに、部材の種類や材質、コスト等の属性情報が既に組み込まれている、という点です。
- Autodesk社のRevit
- GRAPHISOFT社のArchicad
- 福井コンピュータアーキテクト社のGloobe
上記の3つが日本国内で流通しているBIMソフトの代表的なものです。
店舗デザイン事務所などで広く導入されているA&A社[販売元]のVectorworksをBIMソフトとして位置付けるケースもあります。
VectorworksがBIMソフトとして分類される考え方は、壁属性や窓属性などの思想が、前身のMiniCADの頃から実装されている為です。
BIMという言葉がなかった時代から先駆的にそうだったのですが、Ver.2020からは、Revitのネイティブデータとの連携が可能になり、CADソフトからBIMソフトに進化を遂げうるツールとして、唯一のソフトなのかもしれません。
BIMと3DCADの違い
3DCADとBIMの違いですが、3DCADは、直方体や円柱・球などのプリミティブな図形をモデリングしていくのに対し、BIMソフトは既に壁や窓、床などの属性をもった図形をモデリングしていきます。
例えば、壁の属性を持ったところに窓属性のものをくっつけると、勝手に壁に穴が開くのですが、3DCADの場合は、自分で壁(として描いた柱状体)に穴を開けないと、お部屋の中は真っ暗なままです。
また、BIMソフトでは、はじめからオブジェクトが窓属性やドア属性などに分類されているので、建具がいくつ必要なのかという情報がどんどんデータベース化されていき、ゆえに「自動積算」ということが短時間で可能になる訳です。
さらに多くのBIMソフトにはレンダリング機能が付いており、それなりに見栄えのする建築パースを出力することもできますので、設計図からプレゼンテーションパースまで、一気通貫で、しかも短時間で、ぜんぶ自分でできてしまうのです。
これが、BIMです! 楽しく、夢があるツールなんです。
BIMを独学で勉強する方法は?
BIMソフトの無料体験版を活用する
いずれのBIMソフトにも、30日間程度でしたら、体験版として無料で使用できる期間が設けられておりますので、そちらを利用するのもよいでしょう。
ただし、3DCADを使ったことがないという人はいきなりBIMを学ぶのではなく、3DCADから勉強することをオススメします。
初心者は3DCADの無料体験版から始める
社会人だと、なかなか集中して勉強できず、あっという間に無料体験期間30日が過ぎ、使えなくなったという話はよく聞きます。
せっかく3次元モデリングが面白くなってきたいうところで無料体験期間が終わってしまうからです。
BIMの習得の前に、自宅一軒くらいモデリングしてみたいという人には、3DCADの無料版のSketchUP(Trimble社)で、まずは1軒、3Dで建物を描いてみるのもよいでしょう。
いずれにしても、ご自身の手をうごかす、自分でモデリングしてみる、ということは実務レベルでは、とても大事なことです。
書籍で勉強する
本を使って勉強することも可能です。
ここ3年ぐらいはBIMの本が結構な勢いで出版されて、カラーで分かりやすく操作を説明しているものも多く、またサンプルデータをダウンロードして本に沿ってソフトを操作しながら勉強していくことも可能です。
私の経験や知人の口コミからも以下の4つぐらいがおススメ本になります。
- 図解入門 よく分かる最新BIMの基本と仕組み(秀和システム)
- Autodesk Revit公式トレーニングガイド(日経BP社出版)
- はじめてのAutodesk Revit & Revit LT 2017対応 実践! BIM入門ガイド
- Autodesk RevitではじめるBIM実践入門(技術評論社出版)
ざっくりですが、それぞれの書籍の特徴を見ていきましょう。
図解入門 よく分かる最新BIMの基本と仕組み(秀和システム)
この本は入門者が全体像を知るには良いと思います。
代表的なBIMソフトの特徴や活用事例、またAI、IoT、VR、ドローンといった最新技術との連携も記載があります。
目次は以下です。
第一章 BIMとは何か
第二章 BIMによる設計
第三章 BIMによる施工
第四章 BIMの導入方法
第五章 組織でのBIM活用
第六章 解析とシミュレーション
第七章 BIMと連携する技術
第八章 BIMと連携する機器
第九章 BIMによる経営戦略
第十章 将来のBIM
Autodesk Revit公式トレーニングガイド(日経BP社出版)
この本は第二版を買うようにしましょう。
第二版からRevit2021に対応して上下巻のシリーズとなっていますし、初版(2014年)は2D図面から3Dモデルを作成するという手法を推奨しており、本来の3Dモデルから作成し2D図面はその投影図という最近のBIM手法とは違った内容となっているためです。
第二版ではこの辺りの手法も最新のものに一新されてのものになっています。
またRevitの入門者から既存ユーザーまで活用できる内容になっています。
はじめてのAutodesk Revit & Revit LT 2017対応 実践! BIM入門ガイド
Revitの入門者にも以下の目次でも分かる通り、一通りの使い方をマスターできる内容となっています。
またRevitと廉価版のRevit LTのどちらにも対応しています。
RevitとRevit LTの大きな違いは以下です。
- 解析機能の有無
- レンダリング機能の有無
- 協業機能の有無
この本の目次は以下の構成です。
第一章 Revitの図面と基本操作
第二章 基本設計
第三章 プレゼンテーション
第四章 図面作成
第五章 シート設定と図面の書き出し/読み込み
第六章 ファミリの作成
Autodesk RevitではじめるBIM実践入門(技術評論社出版)
BIMの過渡期ではいきなり3Dモデルから作るというところが挫折しがちなのですが、この本は2D図面から3Dモデルを作るという従来のやり方を踏襲した、いわば現実に寄り添った手法?でrevitを初心者にもわかりやすく解説しています。
先にご紹介した「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」とは異なった手法の紹介となります。
また簡単なサンプルデータを使って練習することもできます。
第一章 BIMツールRevitの概要を理解する
第二章 Revitの基本操作を理解する
第三章 平面図を作成する
第四章 外構図を作成する
第五章 平面図を着色する
第六章 集計表と図面シートを作成する
第七章 ファミリを作成する
第八章 線の表現を理解する
第九章 モデルのエッジを編集する
第十章 リファレンス
AutodeskのRevit無料チュートリアルで学ぶ
Revitの無料チュートリアルがあります。
ここまで無料で学べるとは、まさにフリー戦略でユーザ数獲得を狙っていますね。
でもBIMオペレーターになりたい人にはたまならい情報でしょう。
独学じゃないけど、しっかり学ぶならスクールや養成講座が一番!
今まではBIMの独学方法についてご紹介してきましたが、やはり誰かに教わりたい、体系的な教育環境で学びたい、質問できる人がそばにいてほしいと、思うことがあります。
そんな教育環境にピッタリなのが養成講座のようなところで、少しずつBIM養成講座的なところやスクールが増えてきているようです。
WinスクールのBIMセミナー
専門家から体系的にBIMを学びたい場合は、以下のようなWinスクールが開催しているセミナーがおすすめです。
今まで知らなかった機能を知ると、自己流でやっていたBIM作業が格段に効率化されますので、一度、体系的に学ぶことをおすすめします。
Winスクールのセミナーの特徴は以下です。
- RevitやArchiCADを学べる
- 会場もしくはオンラインセミナーを選べる
- BIM以外でも教えられるCAD種類豊富
- BIM初心者でも受講可能!
ヒューマンアカデミーのBIM養成講座
多くは、CAD養成講座の別講座として設けられており、おすすめはヒューマンアカデミーです。
建築3Dモデリングコースというのがあり、RevitやArchiCADの両方が学ぶことができます。
それだけでなく、モデリングしたものを3Dプリンターを使い模型を出力するところまで教えてもらえるのです。
養成講座のメリットは以下のようなところでしょう。
- 自由にBIMソフトを触れる環境を提供してくれる
- 体系的にまとめられた講義を聞ける
- テキストをたくさんもらえお得感を感じる
- 教えてくれる人が近くにいる
自分がデザイン的な分野でスキルを高めたいのか、施工管理や積算向きなのか、設備設計なのか、構造解析にBIMモデルを活用したいのか、まずは、その辺をはっきりして、自分のペースでモデリングをコツコツやってみて、行き詰ったら、相談できる人がそばにいる・・・というのが、スキルアップの一番の近道のように思います。
まずは無料オンラインセミナーや無料体験セミナーがおすすめです。
以下にもBIMのスクールを紹介していますので参考にしていただければと思います。
BIMを採用している企業は社内研修でも学べる
自己啓発的な養成講座とは別の流れとして、企業内研修を用意している企業も少しずつ増えてきています。
多くは、大手ゼネコンや組織設計事務所などですが、中小企業でも、全社的にBIMに舵を切った企業では、社内研修で組織の強化を進めています。
ネットなどで仕事を探すと結構な確率でBIMの研修を受けられることを募集の売りにしているところが結構多いです。
未経験でも企業内でしっかりと教育をして活躍してもらおうという会社が多いのです。
なので、年齢にもよりますが、そういった企業に採用してもらいOJTを受けながら習得するやり方もありですね。
BIMを学んだら資格を取得するのもオススメ
今注目のBIM仕事に就きたいと思った時、最初にステップとしては必ず企業の面接があります。
その時にBIMの資格を持っていると言えればアピールになるでしょう。
もちろんスキルアップするためには実務に勝るものはありませんが、資格を取得するために勉強することで体系的に学ぶことができるでしょう。
まだまだBIMの資格は多くはありませんが、ここではそのいくつかをご紹介します。
Revit Architecture ユーザー試験
Revit Architecture ユーザー試験はRevitの販売元であるAutodesk社が運営する試験です。
試験内容は、Revitの使い方や応用などを問う試験で、筆記と実技から構成されています。
出題数は30問で、試験時間は約50分となっています。
ARCHICAD オンライン認定試験
ARCHICAD オンライン認定試験はArchicadの販売元であるGRAPHISOFT社が運営する試験です。
試験内容は、試験の対象者は、Archicad使用歴が1年以上のユーザで、出題数は30問で、試験時間は約120分となっています。
BIM個人資格認定試験
一般社団法人buildingSMART Japanが運営する資格で2021年6月より開始します。
buildingSMART Internationalが実施してきた「プロフェッショナル認定制度」という現在世界8カ国(オーストリア、中国、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ロシア、スペイン、スイス)で実施され、80プロバイダー、約3000人の認定者を出している認定制度により国際的に標準化されたBIMスキルによって、個人のスキルを判定しようというものです。
BIMのスキルを身に付けたらどこで働き始めれば良い?ベストなキャリアプランとは
BIMオペレーターとしての就職先は、ゼネコンや設計事務所になります。
BIMは「モデリング」で、3次元設計なので、2Dの図面がCADで描けば十分という会社では、BIMのスキルを活かすことも、評価されることもありません。
なのでこの辺りはしっかりと面接時にBIMを使っている会社か、きちんと評価されるのか?2DCADがメインではないよね?というところを確認しておきましょう。
面接の時に見せることができるかは分かりませんが、自分でモデリングした成果物をポートフォリオとして持っておき、面接で求められたらすぐに出せるようにしておきましょう。
BIMオペレーターとして更なるキャリアアップをイメージしたい方は、以下の記事を参考にして頂けると幸いです。
BIMの独学まとめ
それでは、最後にこの記事のポイントをまとめます。今回はBIMを独学する方法として以下のようなやり方を説明してきました。
- BIMソフトの無料体験版を活用する
- 初心者は3DCADの無料体験版から始める
- 書籍で勉強する
- AutodeskのRevit無料チュートリアルで学ぶ
- 独学じゃないけど、しっかり学ぶならスクールや養成講座が一番!
- BIMを採用している企業は社内研修でも学べる
- BIMを学んだら資格を取得するのもオススメ
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