CIMとはConstruction Information Modeling/Managementの略で土木関係の業務をITを使って効率化するためのツールで、国土交通省主導で国全体へのCIM導入を推進しています。
まだまだCIMを使える人材も不足しており、また日本の人口減への対応もあり、今後ますますCIMオペレーターの需要は増えると考えられています。
今回は、未経験からCIMオペレーターになり、今では建設コンサルタントで活躍する34歳の女性の方が、どのようにキャリアアップしていったのか、今後の業界動向はどうか、などを語ってもらいます。
【この記事は以下のような人向けです】
・CIMでできることを知りたい
・未経験でCIMオペレーターになりたい
・未経験からどんなCIMの仕事に就けるのか知りたい
・未経験のCIMの仕事の見つけ方を知りたい
・未経験からどのようにスキルアップしていけるのか知りたい
・未経験から苦労するところを知りたい
CIMでできること!CIMオペレーターとは
CIMとは、CIMソフトで道路、地形、土木(盛土、切土)、構造物などの3Dモデルを作成し、それを画面上で関係者で共有することで建設生産システムの効率化・高度化を目指して取り組まれてきました。
上記のようにCIMソフトを使って各種のCIMモデルを作成するのがCIMオペレーターの仕事です。
今までは2次元の図面や時には紙の図面を使って工事関係者で情報共有していましが、より分かりやすい3Dモデルを使うことで生産性向上を目指せます。
また、CIMモデルに色々な属性情報を追加することで工事計画や工事のシミュレーションも可能です。
ドローンを撮影した現場の写真と、CIMモデルを比較して工事の進捗を把握するなんてこともでき、i-Construction(アイ・コンストラクション)の取り組みの一つです。
未経験からCIMオペレーターの仕事の探し方や仕事内容は?
土木構造物と地形の3次元モデリングが主な仕事です。
私は現在34歳で、32歳の時に未経験からCIMオペレーターとして派遣社員で働き始めました。
それより以前に数か月CADを使った仕事をしていました。こちらも派遣社員でした。
32歳でCIMオペレーターになり2社ほど派遣社員として経験し、今では建設コンサルタント会社で正社員として働いています。
年収は250万ほどです。
派遣社員時代(1年半ほど)は、海洋土木の建設会社でCivil3d、AutoCAD、Revit 、Navisworks、GEORAMA、c-Grout、infraworks、navis+など幅広くソフトを使い構造物や地形などのモデリング(CIM)を担当していました。
全てのソフトを未経験から覚えていき、またいきなりの3Dモデルを扱う仕事だったので色々と覚えることが多く大変でした。
ですが独学しながら、周りの先輩方にも助けて頂きながら習得していきました。
派遣会社はマイナビスタッフとリクナビ派遣に登録していました。
今は、建設コンサルタント会社で正社員として派遣社員時代に身に付けたCIMソフトの知識を活かし、構造物は主に防波堤、砂防堰堤、橋梁や道路などの3DモデリングをCivil3Dで行い、地盤改良に伴う削孔ラインのモデリングはC-Grout、地層のモデリングはGEORAMAで行っています。
その作成したモデルをNavisworksやInfraworksに読み込み、属性情報を付与したり、施工計画のシミュレーション動画や、よりリアリスティックな景観を再現し説明資料や提案資料としての画像や動画を作成したりします。
他にはモデルデータをクラウドにアップロードし、日々の工事進捗を記録や、設計図をモデリングし施工前段階の検証という事も行っています。
現在、正社員として1年半が経過しようとしていますが、充実した日々を送れています。
CIMオペレーターの仕事で大変なこと
現在取り掛かっている作業は既存構造物のモデリングです。
CADデータがなく、紙(PDF)しか図面がないので、まずは何十枚とある図面をトレースするところから始め、CADデータを作成してやっと3次元の作業に入ります。
特に古い建物・構造物はこういったことが多々あるので大変です。
これはCIMの世界だけでなく、CADやBIMの世界でもそうなのでしょうが、デジタルを使って仕事を効率化しようとすると、アナログデータからデジタルデータへの作り直しが発生するので致し方ないと思っています。
紙図面のCIMデータ化が終われば、これからはCIMソフトとして業務効率化など価値の見せ所だと思います。
CIMの将来性は?実際の仕事の中で感じること
国土交通省は2023年には原則BIM/CIM化を目指して推進しているので、CIMの仕事やオペレーターの需要は十分にあると思います。
仕事の増加傾向は日本全体で見れば当然増えていますが、私が所属している会社ではまだ横ばい状態です。
というのもやはり人材不足、使い手がいない・見つからないことや、既存社員の技術の習得がスムーズに行かないといった問題点があります。
それに加え、発注する側もICT環境の整備や技術・見識に乏しい面もあるかと思います。
ただ、最近ではBIM/CIMに特化した会社が設立されていたり、各社でそれ専門の部署が作られていたりしているので、CIMの将来性に気づき、本気で投資している会社ほど、今後CIMのメリットをどんどん享受していけるのだろうと感じています。
したがって、こういった会社を見つけ、応募し採用してもらえるとCIMという最新技術を身に付けられ、貴重な人材に慣れると思います。
未経験からどのようにCIMのスキルアップをしたか?
2DCADからキャリアをスタート(半年間)
もともとCADって何?というど素人からのスタートだったので、まずは2DCADから学びました。
学び始めたのも32歳の時でした。
具体的にはAutoCADの2次元の作図の仕方を本(楽しく学ぶAutoCADLTドリルブック)や、派遣会社の無料研修で学ばせていただきました。
例えばテンプスタッフでのCAD専門職スキルアップ講座などがあります。
Revit(BIMソフト)からCivil3D(CIMソフト)の習得へ
2DCADが身に付いたので、次に3DCAD、正確にはBIMソフトであるRevit(Autodesk社)を勉強しました。
本(はじめてのAutodesk Revit&RevitLT)を購入し、それに従ってRevitの基本操作と、3次元で建物をつくるとはどういうことか、というのをおおまかに学びました。
その後結局Revitではなく同じくAutodesk社のCivil3D(兼AutoCAD)を使っていく、という意向になったため、AutoCADの3次元モデリングをYoutubeで勉強しました。
特にAutoCADの2次元の機能に関しては、書籍やインターネットでたくさんの情報がありますが3次元に関しはなかなか見つからなく、初歩的なところで幾度となく躓きました。
3次元に慣れたところでCivil3DをAutodesk社がインターネットで公開しているトレーニングテキストや本(これからCIMをはじめる人のためのAutoCADCivil3D入門)を進めていき身に付けていきました。
周辺ツールのNavisworksやInfraworksを勉強
NavisworksやInfraworksについてもAutodesk社のトレーニングテキストで学びました。
これらも共にAutodesk社のソフトです。
Navisworksは、Civil3Dで作成した土木工事現場の3Dモデルを関係者で画面上で共有し、施工シミュレーションや干渉チェック、色々な切り口で工事の進捗状況を確認するためのソフトです。
InfraWorks は、CIvil3Dで作成した3Dモデルを取り込み、アニメーションやシュミレーション等を簡単に作成でき、誰もがイメージしやすい現況地形モデルをベースに 3次元設計を行う事が出来るツールです。
Navisよりもリアルな表現ができ、都市モデルの計画案などに役立ちます。
地盤改良に伴う削孔ラインのモデリングに使うC-Groutや、地層のモデリングに使うGEORAMAは、CTC社が行っている研修に会社が行かせてくださって身に付けました。
このようにCIMオペレーターは、CIMソフトのCivil3Dだけの操作スキルだけ身に付ければ良いというものではなく、周辺ツールも身に付ける必要があります。
一般的なオペレーターが使用するソフトは、Civil3D、Navisworks、Revit、Infraworks、が主流です。
C-groutとGEORAMAは地盤改良に関わる会社しか使用しません。
色々ソフトを並べてしまいましたが、基本的にはCivil3DもしくはRevitさえ覚えてしまえば、Navis 、infra の操作は1〜3日程度で覚えられると思いますのでそう難しくはないと思います。
各ソフトの違いをまとめると以下の感じです。
・Civil3D⇒構造物は主に防波堤、砂防堰堤、橋梁や道路などの3Dモデリング
・C-Grout⇒地盤改良に伴う削孔ラインの3Dモデリング
・GEORAMA⇒地層の3Dモデリング
・NavisworksやInfraworks⇒作成したモデルを読み込み、属性情報を付与したり、施工計画のシミュレーション動画や、よりリアリスティックな景観を再現し説明資料や提案資料としての画像や動画を作成
CIMを覚える上で大変だった点
何事にも言えるかと思いますが、まずは興味を持てるかどうかだと思います。
最初のうちは、ソフトの習得や専門用語を覚えるのが大変です。
あとはなぜこの形状が作れないのか、他の手段は何かないか、という探求心も大事に思います。
必ずどこかで躓く場面があるので、そこで諦めずに模索し続けられる力があれば大丈夫です。
大変だったことは未経験からの技術の習得です。「CADって何?」の状態から初めたことに加えスクールに通う余裕もなく、ましてや建設業界の知識も皆無でしたので、最初の入り口がとても入り辛かったです。
やはり、興味があった、やってみたいという気持ちがあったからこそここまで続けてこられたのかなと思います。
また、専門的な作業になればなるほどネット上にある情報も少なくなっていくので、周りに詳しい人間がいない・サポートを受けられない環境の場合は、突破口を見つけるのが非常に難しいかと思います。
CIMオペレーターのやりがい
私の場合のやりがいは、個人的には”作る”ことが好きなので、それに携われることです。
ずっと同じものを作るのではなく案件が終われば次の案件、また次の案件と日々変わるので飽きないというのもあります。
人が生活できる街づくりのような仕事に関われるという「やりがい」を感じていたので興味を持って続けることができています。
CIMを今後覚えようとしている人へのアドバイス
私の様にCADや土木に関して、何の知識もない状態の人間でもCIMの仕事をやってくることができています。
もちろん知識の吸収は必要ですが、覚えたいという意思があればどなたでも始められる、続けられる仕事だと思います。
今後ますますICT化が進む反面人材も不足しています。
とくにCIMは土木業界ということもあり建築業界より不人気な面もりますが、その分需要は高いと思います。(かく言う私も最初はBIMを志望していました。)
また昨今各地で災害が目立ってきたように思います。
そういったときにもしかしたら土砂災害で生じた土量の算出、浸水を考慮した避難経路のモデル、壊れた建物、河川、道路の復旧工事などなどにCIMが役立つかもしれないと思うと、ただモデルを作成するだけではないやりがいも感じられると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
CIMオペレーターは、今後、土木事業のDX化(デジタルトランスフォーメーション)によりますます需要が伸びる仕事だと思います。
CIMオペレーターの仕事の見つけるためには、まずはCADに強い転職エージェントや派遣会社に登録することが近道です。
それぞれには専門コンサルタントがいるところが多いので、複数のところに登録し、相談するところから始めるのが良いと思います。
登録や相談は無料ですので。
以下はCADに強い転職エージェントや派遣会社をまとめていますので、参考にしていただければと思います。
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