Blenderに関心はあるけど、「難しそうだな」とか「周りでBlenderをやっている人がいないから不安だ」などの理由により、Blenderを使用するのに躊躇してはいませんか?
Blenderは、建築分野において知る人ぞ知るソフトウェアです。
Blenderに備わっている機能を使いこなすことができれば、フォトリアルで高品質な3DCGパースを制作することが可能です。
GoogleなどのWebサイトやInstagram、TwitterなどのSNSで「Blender architecture」と検索すれば、数多くのフォトリアルかつ芸術的な作品を見ることができます。
私の周りでBlenderを知っている人はほとんどいませんでしたが、海外アーティストのBlender作品を見ていたら、あまりのクオリティの高さにすっかり魅了されてしまいました。
「これほどの高品質な建築パースが制作できるようになれば、業務にも十分に生かせるのでは」と考えた私は、あまり迷うことなくBlenderを習得することを決意しました。
本記事では、これからBlenderで建築パースを作ってみようと思っている人向けに、Blenderの建築パースの需要やメリット・デメリット、よく使う機能5選、おすすめチュートリアルについてご紹介します。
建築業界にて実務でBlenderを使って建築パースを作っている筆者が初心者の方向けにご紹介します!
Blenderでモデリングした建築パースの需要は?
Blenderで制作した建築パースのニーズ
Blenderで制作した建築パースの使用用途としては、
- フォトリアルな建築パースによるプレゼン力の向上
- VRコンテンツ制作による内覧体験の向上
が挙げられます。
Blenderで制作した建築パースを施主様への初回プレゼンに用いることでビジュアルに訴求することができ、プレゼンに幅が広がります。
また、高スペックのPCを用いれば、その場でBlender画面を動かして建物外観をいろいろな角度で見せたり、室内に入ってルームツアーのように使ったりすることもできるでしょう。
逆に低スペックのPCではレンダープレビューの読み込みに多くの時間を要してしまい、上記のような使い方には不向きです。
以下にBlenderにおすすめのデスクトップパソコン、ノートパソコン、ペンタブをまとめていますので参考にして頂ければと思います。
今後は、Blenderなどの3DCGソフトウェアで制作した建築パースをベースに、VR技術を駆使してバーチャル展示場やウォークスルー動画など内覧体験できるコンテンツを制作する需要が増えていくでしょう。
実際に、Webサイトで手軽にバーチャル展示場を体験できる機会が増えており、高額な展示場を出展できない企業様が採用するケースも増えていくのではないでしょうか。
Blenderで建築パースを作れる人材の需要
また、Blenderによる建築パース制作者の人材としての需要としては、
- 建物や背景の3DCGを制作することができるクリエイター
- Blenderで制作した3DCGをVRコンテンツ制作に組み合わせることができるクリエイター
が挙げられます。
上述したように、高品質な3DCGパースとVR技術の融合により、リアルな体験ができるコンテンツ制作の需要が増えていけば、その作り手の需要も増えていくでしょう。
特に、背景デザイナーの場合、建築分野のみならず、ゲーム内の建物や背景をモデリングできる人材としての需要も増えていくのではないでしょうか。
実際に転職を考えている方は、以下のBlenderに強い転職エージェントがおすすめです。
転職までしなくとも以下のようにBlenderで副業しながら稼いでいる人たちもいますね。
Blenderモデラーの副業需要もあるということです。
Blenderを建築で使用するメリット・デメリット
メリット
メリットは以下の4つ。
- 無料で使える
- 商用利用が可能である
- 建築パース制作に必要な工程をBlenderのみで行える
- Windows、Mac、Linuxに対応
それでは一つずつ詳細を見ていきましょう。
無料で使える
無料で使えるのが最大のメリットです。
個人情報の登録不要でダウンロードすることができ、すぐに使うことができるので、まずは触ってみて3DCGを体感してみることです。
Blenderを習得するのは難しいと言われていますが、全ての機能を習得しなくても建築物の3Dモデルを作成するのに必要な操作だけ覚えれば十分です。
仮にBlenderが合わずに途中で挫折したとしても、有料の3DCGソフトをやってみて挫折するよりダメージは遥かに少ないと思います。
公式HPのトップ画面下部に「Blenderは永遠に無料のソフトウェアです」と記されていますし、途中で有料に変わることも無さそうなので、まずは試してみるといいでしょう。
商用利用が可能である
公式HPのライセンスページに「無料で使用できます。・・・あなたの作品を自由に販売してください。」と記されています。
また、「Blenderで作成したものはあなたの唯一の財産です。・・・Blenderは、アーティストが商業的に使用したり、スタジオがアニメーション映画やVFXを作成したり・・・」とも記されています。
つまり、Blenderを無料で使えるだけでなく、Blenderで作成した作品を自由に販売することもできるのです。
例えば、3Dアセットを作成してBOOTHで販売したり、Blenderの操作方法などのノウハウをまとめてAmazonで電子書籍として販売したりすることができます。
今話題の画像生成AIは、自由に使用することはできても、商用利用は不可だったり、著作権問題をクリアしていなかったりと問題がいろいろありますが、Blenderには基本的にはそのような心配がありません。
モデリングからレンダリングまで、建築パース制作に必要な工程をBlenderのみで行える
Blenderには、建築パースを制作するのに必要なモデリング、マテリアル、ライティング、背景設定、レンダリングまでの工程を完結できる機能が備わっています。
また、レンダリング後の画像をより良いものに調整することができるコンポジティングも備わっており、他のソフトウェアに頼らなくても、Blenderだけで高品質な建築パースを制作することが可能です。
Windows、Mac、Linuxに対応
Blenderの対応OSは、Windows、Mac、Linuxです。
シェアが高いWindowsとMacのどちらにも対応しているので、使用するのに問題はないでしょう。
Blenderと比較されることもある3DCGソフトウェアの3ds Maxは、Windowsのみの対応なので、Macユーザーは使うことができません。
デメリット
建築物の3DCG制作についての情報源やチュートリアルが少ない
Blenderによる高品質な建築パース制作の情報源は少ないのが現状です。
簡単には情報が手に入らないので、Udemyの外国人講師による有料の講座を受講するか、海外サイトのチュートリアルで勉強することもできますが、説明が日本語でないので、理解するのに苦労するかもしれません。
その他、VRコンテンツの制作をBlender単体では制作できないことも挙げられますが、無料で使用できることを考えれば、必ずしもデメリットとは言えないかもしれません。
建築パースでよく使うBlenderの基本機能
押し出し
編集モードにて、頂点、辺、面を選択し、押し出して新たな頂点、辺、面を作成する機能です。
躯体の凸凹部やベランダなど持ち出し部の押し出し、厚み付け、新たな頂点及び辺の作成など、用途は幅広いです。
使い方は、編集モードにて頂点、辺、面を選択して、Eキーを押してマウスを動かすと自由に押し出せます。
編集モードのメニュータブでは、「頂点・辺・面」⇒「頂点・辺・面を押し出し」をそれぞれ選択します。
Eキーを押した後に押し出す方向を指定すれば(方向をロックする)、指定方向のみにまっすぐに押し出せるようになります。
例えば、Y方向にまっすぐに押し出したい場合は、E+Yキーを押してからマウスを動かすと、XとZ方向には動かせなくなるので、Y方向のみに押し出せるということです。
建築パース制作においては、最も使用する機能だと思います。
以下の画像では、オーバーハングの1階より外に突き出ている部屋やベランダの部分を押し出しています(ベージュ色の部分)。
ループカット
オブジェクトに辺ループを追加して分割することができる機能です。
ループカットも押し出しに次いでよく使う機能で、凸凹部や持ち出し部、窓サッシ、玄関ドアなど、躯体との取り合いにループカットを入れて分割し、押し出してモデリングしていきます。
使い方は、編集モードにてループを入れたい箇所付近にマウスポインタ―を合わせctrl+Rキーを押し、左クリックしてループをスライドします。
ループを入れる箇所を決めたら、2回左クリックして確定します。
ツールバーでは、「ループカット」をクリックしてから、ループを入れたい箇所にマウスポインタ―を合わせます。
ループカットは、他の面への影響を考えて、必要な箇所に入れるようにするのがコツです。
なぜなら、頂点が5つ以上あるポリゴンにはループカットを入れることができず、ナイフツールなどでカットするしかないケースが出てきます。
余分な頂点を溶解して部分的に削除できる方法もありますが、辺や面ごと削除されてしまうこともあります。
他の面への影響を考えて、必要最小限にループを入れるようにすることがポイントです。
非選択物を隠す
編集モードにて、選択した部分以外を非表示にする機能です。
透過表示に切り替えて作業をする場合、手前面だけでなく裏面まで選択したり、ループカットを入れてしまったりすることもあります。
そこで、選択した部分以外を非表示にしてから作業すると、上述したような問題を解決できます。
モデリングをする際にはよく使う機能の一つです。
使い方は、編集モードにて表示したい頂点・辺・面を選択してshift+Hキーを押します。
すると、選択した頂点・辺・面以外は非表示になります。
再表示するには、Alt+Hキーを押します。
以下の画像の場合、建物の躯体メッシュを選択して、非表示機能を適用しています。
インタラクティブミラー
オブジェクトを反転する機能です。
アパートなど複数の住戸から構成される建物の場合、隣り合う住戸のドアや窓の形状は同じでも、左右対称になっていることが多いと思います。
そのような場合には、一つモデルを作成しておき、リンク複製して左右反転させるだけで簡単に作れてしまいます。
使い方は、オブジェクトモードにて対象となるオブジェクトを選択しctrl+Mキーを押します。
オブジェクトモードのメニューでは、「オブジェクト」⇒「ミラー」「インタラクティブミラー」です。
その後、反転させる方向キーを押すとオブジェクトが反転します。
以下の画像ではドア全体を左右反転しています。
リンク複製
オブジェクトをリンクコピーする機能です。
元のオブジェクトとコピーしたオブジェクトは親子関係でなく、対等の関係になります。
つまり、コピーしたオブジェクトを修正・追加・変更したら、元のオブジェクトにも反映されます。
例えば、同じ形状の窓をリンク複製して配置しておくと、後でサッシ枠の色やガラスマテリアルの設定を変更するような場合に、一括で反映させることができます。
使い方は、オブジェクトモードにて、リンク複製したいオブジェクトを選択してAlt+Dキーを押します。
Blenderの建築パース制作におすすめのチュートリアル
最後に、Blenderで建築パースを制作するノウハウが学べるおすすめのチュートリアルを紹介します。
UdemyのBlender講座の中から、私が実際に受講してみて役に立った講座は以下の3講座です。
Create & Design a Modern 3D House in Blender
出典:Udemy
外国人講師によるチュートリアルですが、講師の英語が聞き取りやすく、日本語訳機能を利用すれば十分に理解できる内容となっています。
参照画像を読み込んでモデリングし、マテリアル、ライティング、HDRI、外構、レンダリング設定、レタッチコンポジティングまでの基本が身に付きます。
特典として、制作モデルのBlendファイルと、モデリングに使用した3Dアセット、テクスチャがもらえます。
外観パース制作ノウハウを最初に学ぶ講座として大変おすすめです。
Create & Design a Modern Interior in Blender
出典:Udemy
1の講座と同じ講師によるチュートリアルです。
内観パースの基本的な制作手順と、インテリアモデルの作り方を多く学ぶことができます。
レンダリング後はフォトリアルな仕上がりになるので、チュートリアルを通してBlenderの高機能を体感できる講座となっています。
特典として、モデリングに使用した3Dアセットとテクスチャがもらえます。
Create & Design a Modern Exterior in Blender 2.9
出典:Udemy
最初にご紹介した2つの講座を受講して基本的な制作手順を学んだ後にこの講座を受講することをおすすめします。
豊富なノウハウを次々と解説してくれて、まさに目から鱗が落ちました。
講師の英語が聞き取りにくいのが難点ですが、基本的な操作方法が身に付いていれば画面を見て理解することはできますし、とにかくスキルを飛躍的に伸ばすためのノウハウがこの講座に詰まっています。
また、外部ソフトである「Bridge」や「Lightroom」の使い方も解説してくれます。
Blenderを学べるオンラインスクールをお探しの方は以下の記事も参考にして頂ければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はBlender初心者が建築パースを作ってみようと思っている際に気になると思われるBlenderの建築パースの需要やメリット・デメリット、よく使う機能5選、おすすめチュートリアルについてご紹介しました。
今回の記事内容をまとめると以下です。
- Blenderによりフォトリアルな建築パースがモデリング可能でプレゼン力向上に繋がる
- VRコンテンツ制作による内覧体験の向上
- Blenderで3DCG作成しVRコンテンツ制作に組み合わせることができるクリエイターの需要は増加傾向
- 建築パース作成に良く使うBlender機能は、押し出し、ループカット、非選択物を隠す、インタラクティブミラー、リンク複製、の5つ。
- Blenderの建築パース制作におすすめのチュートリアルはUdemyで3つご紹介
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