3DCADにはハイエンドCAD、ミッドレンジCAD、ローエンドCADがあります。
ハイエンドCADは高価ですが、様々な機能を有しており、かゆい所に手が届きます。
慣れれば自分の頭の中で考えているものをそのまま表現できるようになります。
ミッドレンジCADは、基本的な機能はあり、そこに必要な機能を追加してカスタマイズしていけるようになっているものが多いです。
使いこなせば、設計者として仕事をするには十分です。
ローエンドCADは安いですが、本当に基本的な機能しかないため、設計以外の部署のビュアーとして使用されていることも多いと思います。
これだけカテゴリーがあるとたくさんCADもあって分かりづらいですし、それぞれの特徴は?どれを使うのが良いの?と迷いますよね?
そこで今回は、最も多くの設計者が使用しているであろう、ミッドレンジCADの中でもFusion360、Solidworks、Inventor、Solidedgeについて特徴などを解説していきます。
CAD選びの参考にしていただければ幸いです。
Fusion360、Solidworks、Inventor、Solidedgeの使用経験のある筆者がユーザー目線で特徴についてご説明します。
Fuion360とは?
Fuion360の主な特徴は以下です。
- クラウドベースにCADデータ保存して使える
- パラメトリックモデリング、ダイレクトモデリングの両方が使える
- 様々なCAE(シミュレーション)もできる
- CAMが使え製造部門にも嬉しい
- 2D図面機能が乏しい
Autodesk社が開発した3DCADで、設計部門と製造部門が連携して、コンセプト及びプロトタイプの開発を行うことをコンセプトとしています。
最大の特徴は、クラウドベースで動くことです。
クラウドに保存することで、データを簡単に共有することができます。
また、価格が安い(後の章で解説)割に、多くの機能を有しています。
コスパ最強CADと言ってもいいと思います。
具体的に言うと、他のミッドレンジCADが持っていない、パラメトリックモデリングやダイレクトモデリングといったモデル作成方法が使えたり、熱応力や静的応力などの様々なCAE(シミュレーション)を行うことができます。
また、「製造部門と連携する」というコンセプトから、CAMが最初から使えるのが大きな特徴です。
そのほかの特徴として、アセンブリとパーツのファイル形式が同一です。
3DCADのほとんどはアセンブリとパーツのファイル形式が分かれており、そちらに慣れている方は使いづらく感じるかもしれませんが、アセンブリ作成をする際に、自由にアセンブリ階層の中身を変更できるため、慣れると便利に感じます。
私の場合は、NXというハイエンドCADを使用した経験があり、そちらも同じ形式だったため、違和感なく使用できました。
ただし、ファイル名の付け方には工夫が必要だと思います。
弱点としては、大規模アセンブリだと動作が重くなってしまうのと、2D図面の機能が少ないので2Dの部品図や組図を書くときに不満を感じるかもしれません。
Inventorの特徴
Inventorの主な特徴は以下です。
- Fusion360と同じく、Autodesk社が開発したCAD
- 機械設計、装置設計がメインターゲット
- 部品点数2000点以上の大規模モデリングが可能
- 2D図面機能が豊富
- CAE(シミュレーション)機能はFusion360より劣る
前述のFusion360と同じく、Autodesk社が開発したCADで、機械設計や装置設計にターゲットを置いたものになっています。
モデル作成については、Fusion360とほとんど同じ機能を有しており、シミュレーションに関しては、Fusion360より劣ります。
アドイン機能を入れれば遜色ないレベルになります。
ただし、部品点数2000点を超えるような大規模モデリングにも対応しており、2D図面も十分な機能が備わっています。
そのほか、ソフトウェアに同梱されているAutodesk Vaultというデータ管理ソフトウェアを使用することで、設計部署内でのデータの管理や共有を簡単に行うことができます。
SolidWorksの利点
SolidWorksの主な特徴は以下です。
- SolidWorks社の開発したCADでシェア率高い
- 初心者向けで操作しやすい
- ネットにノウハウ情報が豊富
- ダイレクトモデリングが弱い
- ちょっとした形状修正に時間がかかる
ハイエンドCADでおなじみのCATIAの開発元ダッソーシステムズが開発したCADです。
Inventorと同じく、機械設計や装置設計に向いているCADです。
基本的な機能はそろっており、操作もわかりやすく、初心者が一番初めに触るにはもってこいのCADです。
3DCAD市場においても、約40%あり、外部とのやり取りもやりやすく、何かわからないことがあっても、ネットで調べれば解決することが多いのも良いところです。
基本的な機能は網羅しており、大規模なアセンブリも問題なく動作します。
また、設計に特化した機能が多く、配管や電気系CADとの連携、作図チェックなど、便利機能を使用できます。
機能面で足りないと思った時には、他のベンダーが開発したオプションやアドインが豊富なので、それらを組み合わせることでかゆいところに手が届くようになります。
弱点としては、モデル作成機能でダイレクトモデリングが弱いところです。
私自身の話で言うと、もともとCreoやNXといった、ハイエンドCADを使用してからSolidWorksを触ったため、モデルを作成するときに物足りなさを感じました。
ちょっとした形状修正に時間がかかります。
ただ、パラメータを触って形状を変更すれば同じことはできるので、設計上問題はありません。
Solid Edgeの強み
Solid Edgeの主な特徴は以下です。
- ハイエンドCADのNXの開発元であるSiemens PLM Software社のCAD
- シンクロナス・テクノロジーという独自機能を有している
- 他CADデータの編集に強い
- 直観的に形状修正できる
Siemens PLM Software社が開発しているCADです。
他のミッドレンジCADと同様に、設計に必要な基本的な機能は備わっています。
シンクロナス・テクノロジーという機能を搭載しており、ダイレクトモデリングとパラメトリックモデリングの両方を行うことができます。
他のCADで生成されたCADデータの編集に強い特徴があります。
コマンド数が少なく、直観的に編集ができるのが強みです。
強度解析にも対応しています。アセンブリ拘束の仕方も他のCADと異なっています。
いろいろな面で、他のCADと比べると操作感が独特なので、他のCADを触ってからこのCAD を触ると慣れるのに時間がかかりますが、慣れてしまえば効率的に仕事を行うことができます。
各ミッドレンジCADの機能比較
上記でご説明してきたFusion360、Solidworks、Inventor、Solidedgeの各機能をまとめると以下のような感じになります。
私が使ってきた経験での評価になりますのでご参考まで。
Fusion360 | Solidworks | Inventor | Solidedge | ||
モデリング | パラメトリック | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ダイレクト | 〇 | × | 〇 | 〇 | |
シミュレーション | 〇 | △ | △ | △ | |
設計補助機能 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | |
機能の拡張性 | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | |
2D図面機能 | × | 〇 | 〇 | 〇 | |
大規模データのハンドリング | × | 〇 | 〇 | 〇 | |
データ管理 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
CAM | 〇 | △ | △ | △ | |
レンダリング | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
ネット情報の充実度 | ○ | 〇 | △ | × | |
コスパ | ◎ | 〇 | × | × | |
合計 | 20 | 21 | 19 | 18 |
◎⇒3点、○⇒2点、△⇒1点、×⇒0点
モデリングについて
各CAD基本的な機能は持っていますが、ダイレクトモデリングという点で言うとSolidworksは少し劣ります。
シミュレーション
Fusion360が最も多くの解析を行うことができます。ただし、他のCADも追加機能を購入すれば問題ありません。
レンダリング
各CADレンダリング機能を持っており、大きな違いは見られません。
設計補助機能について
設計補助機能とは、配管配線のルーティングや、作図チェック、PDM機能等のことでFusion360が劣ります。
CAMについて
基本でついているのはFusion360です。他のCADも、追加機能を購入すれば使用できます。
各ミッドレンジCADの価格比較と無料版について
ここで各ミッドレンジCADの価格比較と無料版について触れておきたいと思います。
価格は23年12月時点ものですので、正確なものは各ベンダーのホームページも参考にしてください。
Fusion360 | Inventor | SolidWorks | Solid Edge | |
価格 | \8,800/ \71,500/年 | \46,200/ \367,400/年 | \224,400/年 | \23,119/ \208,068/年 |
無料版 | あり | あり(30日間) | あり(120分) | あり(30日) |
Fusion360は買い切りのプランはありません。他のCADはあります。
Fusion360は、非営利目的であれば無料で使用できます。
ここまでミッドレンジCADの特徴を見てきて、スクールなどで学びたいなと思った方は、以下の記事がおすすめです。
今回ご紹介したCADの全てではないですが、いくつか学べるスクールをまとめてあります。
実際の利用経験からミッドレンジCADを勝手にランキング
ここで様々なCADを使ってきた筆者が、独断と偏見でミッドレンジCADにランキングを付けてみたいと思います。(少しハイエンドCADにも触れています。)
勝手にミッドレンジCADランキングは以下です。
1位:SolidWorks
2位:Fusion360
番外:(ハイエンドCADだが)NXが一番使いやすい
私自身の経験を話すと、一番初めに軽く触ったCADはInventorで、がっつり使用し始めたのはCreo、その次にNX、軽くSolid Edgeに触れて、その後SolidworksとFusion360を本格的に使用しています。
この中で操作感が独特なのはSolid EdgeとCreoで、初めてCADを使う方にはあまりお勧めしません。
学生さんや、初心者の方に一番最初におすすめするのは、SolidWorksです。
一番癖が少なく、わからないことがあっても聞きやすいし調べやすいです。
物足りないと感じても拡張機能を増やせばいいですし、価格も安いです。
一番基本的なプランでも十分使えます。
次点でFusion360です。
価格が安く、学生は無料で使えますし、機能面もしっかりしています。
また、副業で個人でCADを使用する方にもおすすめできます。
部品点数の多い装置設計を本格的にやろうと思うと物足りない部分はありますが、部品設計レベルであれば何も問題なく、解析機能やCAM機能があるのもいい点です。
ただし、クラウドベースで動かす必要があり、ローカルの作業がやりにくいのは個人的には使いづらいと感じています。
個人的に一番良いと感じているのはNXなのですが、ハイエンドCADということもあり、価格が高いので、もし金額的に余裕があり、新しいCADを検討している方がいれば、選択肢の中に入れてみるのはありだと思います。
ラインものの装置やロボットを使った装置の設計はとてもやりやすかったです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ミッドレンジCADでお悩みの方は、まずSolidWorksとFusion360 を検討してみるのをお勧めします。
ただし、どのCADでもしっかりと使いこなせるようになれば、他のCADに変更してもすぐに対応できるようになります。
就職や転職の時にも、CADを使えることは大きなアドバンデージになりますので、まずは今自分が使用できるソフトを完全に使いこなせるように頑張っていきましょう!
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