様々な業界で必要不可欠なツールになっているCADですが、建築や自動車での活用が目立ちます。
ですが、電気業界でも同様に普及しています。
他の業界で使われている同じものや、回路設計用のものまで存在します。
今回は、電気業界で働くCAD業務従事者(設計者やオペレーター)に、業務での大変なところを具体的に語ってもらいましたのでご紹介します。
また今後、生き残っていくために必要なスキルについてもご紹介します。
これから転職を考えている方や、就職のために業界の実態を知りたい学生の方には有益な情報だと思います。
家電関係のプラスチック試作品加工のCAD/CAM業務
家電関係のプラスチック試作品加工業務に従事しておりました。
主な業務の流れは以下の通りです。
- 顧客から図面若しくはデータを頂いてそれを基にCADを使用し2D若しくは3Dデータを作成
- それをさらに加工しやすいように部品ごとにデータ分割
- 加工機にセットできるようにCAMを使用して加工プログラムを作成
- 部品加工後の部品をまとめ組立作業を行いプラスチック試作製品を制作
2DはAutoCAD、3DはTopsolidを使用しています。
顧客から提供されるデータがいまだに2D図面
仕事の依頼をいただいた顧客から図面や3Dデータを頂くのですがそれぞれもらえる媒体が違うのでそれに合わせていくのが大変です。
大きい会社は設備も整っているのでほぼ3次元CADで作られた3Dデータの中間フォーマット(STEPやIGESなど)を提供してくれます。
それを部品ごとに分割して部品加工用NCデータの作成までスムーズに進行します。
しかし提供されたデータが、手書きの図面や2Dデータしかない場合は、それをもとに3Dデータ化する際に、ほぼ高い確率で形状的につじつまが合わないのです。
- ここのRはいくつ?
- 徐変させてもよいRか?
- この壁はどこまで続いている?
- この壁の肉厚はいくつか?
図面を見て3Dデータ作成していると上記のような指示漏れが多いです。
そうなると、顧客とのコミュニケーションが多々発生して3Dデータの作成がスムーズに進めません。
顧客によっては簡単な問合せでも、電話はNGでエビデンスを残すためにFAXやメールで問い合わせる必要があり、相手からの返事が来るまで作業がストップしてしまいます。
3Dデータが作れないと加工プログラムも作成できませんので納期がどんどん近づいてきて午前0時を回らないと帰れない日々が続いてとても大変です。
設計から製造側への情報伝達手段は3Dデータにすべき
昔は2D図面が設計から製造側への情報伝達の手段だったのかもしれません。
2D図面を早く、正確に読み、頭の中で3D形状を思い浮かべられるかが技術者のスキルの一つだったかもしれません。
しかし今の時代、それは非効率です。
情報伝達手段は進化するべきで、3Dデータであると形状の誤認識もなくなり合理的です。
3Dデータを用いることでミスコミュニケーションも減りますし、加工用のデータ作成にも役立ちます。
本当のところは全ての顧客が3DCADを用いて設計して頂くのがお互い嫌な思いもせずにスッキリ済むと思いますが、予算の事もあると思うので安価なものも有りますのでそれを活用して頂きたいです。
そうなれば残業もすくなくなり有難いです。
最悪、図面や2Dデータしかない場合は媒体を頂いてから数日後に打合せの時間を設けて、こちらで事前にまとめておいた問合せ内容を打合せさせてほしいです。
特に形状的に難易度の高い製品では確実に問合せが必要です。
電子回路設計用CADの仕事
電子機器のメーカー勤務を経て、現在はフリーランスの技術職をしています。
専門は電子回路で回路設計用のCADをほぼ常時使用しています。
いくつかの職場での業務を通じて何種類かの回路図CADを習得し、これに関しては保有技能の一つというところです。
一時期大手電機メーカーに派遣で勤務していた時にCADを主業務として担当していたこともあります。
度重なるCADデータ変更で後工程に多大な迷惑
大手電機メーカーに派遣で勤務していた当時、複数の技術部門と並行して開発を進めるかなり大きな規模の回路で、その回路図のCADを担当していたことがあります。
ところがある技術課題について各技術部門の見解が一致せず、同じ変更を行ったり戻ったりするような作業を繰り返したことが発生しました。
同じような変更作業の繰り返しは業務効率が悪く、辟易としたものでした。
そこまではままあることなのですが、開発日程の都合で後工程も既に動いており、CADデータとして集約して後工程に引き渡す都合上、私が窓口になっており、度重なる変更にとうとう先方の部門責任者からかなり厳しくクレームを受けたことがあります。
具体的な後工程は、組み立ての部署だったのですが、スムーズに製造に入れるようにフロントローディング(前倒し)でラインや治具の設計を行います。
製品側が何度も設計変更を行っては、ラインや治具も変更になってしまうので、勘弁してくれ!となるのです。
板挟みになる前にマネジメントに相談
変更の発生自体はCADオペレーターの私の裁量でどうにかできるわけでもないので、後工程の部門には割り切って伝えるよりありません。
同じような変更の繰り返しは非効率的で、業務担当者としては避けたいのは良く分かります。
なので、先方に連絡する時もこちらの事情を伝えつつ理解を求めるようにはしていましたが、それでも納得がいかないということであれば、私の方に言ってこられても筋違いというものです。
技術職として技術的な課題には何とでも取り組む姿勢ですが、こういった部門間の折衝的なことに関しては、下手に何とかしようとして板挟みになっては労が増えるだけです。
なので、開発責任者に近い立場の人に入ってもらうなどして、担当の業務に専念できるように立ち回るのが良いのではと思います。
大手総合電気メーカーの半導体のCADの仕事
大手総合電気メーカーの半導体工場で正社員として働いている49歳、男性です。
AutoCAD(2D版)を使用して半導体装置の設計や改造、ユニット設計を行っています。
工場内のメンテナンスキーパーやオペレーターにもその技術を伝承するために、講師なども兼務しております。
CADで設計するうえで大変なこと
- 意外とコミュニケーションも必要
- 顧客とコミュニケーションを取り、望んでいることをくみ取り、図面に落とし込む
- 発注リスト、見積書、納期に合わせて工程の作成
- 設計ミス、寸法違いあれば部品の再発注
- 設計ミス防止のため事前に入念な採寸、現場調査が必要
- 機械設計者には、電気の知識も必要
設計ともなると、CADの操作だけでなく、上記のようなことも私の職場では必要になります。
CADでただトレースできるだけでは、本当の設計者とは言えないのです。
設計者は知識総動員で全体をコーディネートする
- 最新技術の動向把握(部品、商品、デジタルツール)
- 現場ニーズの把握
- 部品メーカー、工場の得意分野の把握
- 製作部品の精度、値段、納期に配慮した設計ここにテキストを入力
偉そうに言わせていただくと、設計者は指揮者と同じく全ての知識を総動員して仕事に当たらなくてはなりません。
貪欲に新しい知識を学び、吸収して日々業務に従事する心構えが必要です。
CADが使えるだけでなく、現場にニーズに合わせた設計思想が必要になってきます。
そのためには、どのような部品や商品、さらに技術があるのか日頃から把握していなければなりません。
部品メーカや工作工場、その得意加工分野なども考慮に入れながら製作部品の精度、値段、納期にも配慮しながら設計しなければなりません。
設計をする際にも、省力化や安価になるような素材、形状も考慮します。
そのような諸々の事情を総合的にプロデュースできる能力があると一人前の設計者と言えるのではないでしょうか。
電気CADオペレーターが今後身に付けるべきスキル
ここでは少し前向きな話しに変え、電機業界のCADの仕事は大変だ!と言っているだけでなく、どうやったらCADオペレーターとして生き残っていけるのか?を考えていきたいと思います。
3D図面の作成スキル
どうやったら生き残れるか?
ずばり3D図面を作成できるスキルを習得すべきだと思っています。
3D図面とは今までの3DモデルにPMI(Product Manufacturing Information)といった幾何公差など今まで2D図面に描かれていたモノづくりに使う情報を付与したものです。
3DAモデルは、3D Annotationモデルの略です。
電気業界でいうとJEITA(電子情報技術産業協会)が3D図面を推進しており、三次元CAD情報標準化専門委員会のホームページに色々と情報が載っているので見てみると良いでしょう。
3D図面のメリットは、モデルに付与されたPMIを検査や加工などの後工程のソフトが自動で読み取り、検査用CMMパスや加工用パスなどを自動で作成してくれたりします。
要は今までの2D図面は人が情報を読み取り、機械などに情報を手打ちで転記し、機械を動かしていたのが、機械が3D図面に付与されたPMIを読み取ってくれるので、人による転記がなくなるのが大きなメリットです。
今後は、自動化がどんどん進んでいくので、このための3D図面を作れる人は重宝されるでしょう。
別の業界でいうと、建築業界はBIMソフト、土木業界はCIMソフトを使える人材が必要とされます。
CAD作業を自動化するプログミングスキルを身につける
今の時代、CADを使える人はたくさんいます。
そんな中で自分を差別化するためにプラスαのスキルが欲しいもの。
そんな中、各企業は少しでも生産性を上げようと様々な自動化に取り組んでいます。
CAD作業は自動化させたい作業の一つです。
CADとプログミングは相性が良く、CADの操作を知っている人だからこそ自動化ネタを思い付く強みがあります。
CADの自動化によく使われているプログミング言語は、JavaScript、Python、Rubyなどがあります。
嬉しいことに今はプログミングを学ぶスクールも多く、それだけでなく転職も斡旋してくれます。
筆者のおすすめのプログラミングスクールは以下の記事にまとめてありますので参考にしていただければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は電機業界のCAD関連業務について現役として働いている3人のかたに大変なところと、その対処方法、更にはCADオペレーターとして生き残って方法についてご紹介しました。
これらのスキルを身に付け、人材の価値を上げた先には年収アップを狙った転職や副業、独立なども見えてくると思います。
以下の記事では、転職に活かせるスキルや、転職で成功する秘訣、おすすめの転職サイト、副業で稼ぐコツなどを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
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