建造物の設計になくてはならない存在に建築設計の仕事があります。
そんな建築設計を目指したい、なりたい、と思っているけど、残業は多いの?仕事は大変なの?辛いの?と疑問に思う人もいらっしゃると思います。
逆に今、建築設計として働いている人は辛いのは自分だけ?転職も考えているけど、他社や他業種はどうなの?と思う人もいるでしょう。
国家資格の中でも取得が難しい一級建築士資格ですが、実はそのハードルの高さにも関わらず、資格を取得したからと言って驚くほどの高収入が約束されているわけではありません。
この記事では建築設計という仕事の辛い点、良い点とその将来性、年収アップの方法について解説いたします。
1級建築士の資格を持ちゼネコンで設計者として働いている立場で色々とお話しさせて頂きます。
もしこの先、転職を考えている人は以下の記事がおすすめです。
建築設計ってどんな仕事
建築業界での設計といっても、建築設計・構造設計・設備設計と大きく3つに分かれ、建築設計が壁を、構造設計が柱を、設備設計がエアコンを設計しています。
建築設計の国家資格の中に一級建築士があります。
一級建築士の他に、二級建築士や木造建築士といった国家資格もありますが、高層ビルや大規模な寺院などの木造建造物などは一級建築士でないと担当できません。
このように建築設計にも持っている資格によって仕事内容も変わるのも特徴です。
一級建築士の場合は、人々の暮らしを安全に、豊かに、快適にするために、商業施設、住宅、病院など様々な建造物を設計するのが仕事になります。
建築設計が辛い・やめとけと言われる理由
ここでは建築設計に多い設計職・施工管理職の仕事の辛い点を紹介いたします。
労働時間が長い
まず挙げられるのが、労働時間が長いことです。
政府の方針により時間外労働の削減が叫ばれている昨今ですが、建設業界は思うように取り組みが進んでいないのが実情です。
政府の時間外労働の上限規制においても建設業は令和6年4月まで適用除外とされており、それほど労働時間の削減が難しい職業です。
基本的にどこも人員不足の状況ですので、手持ちの仕事がなくなることはありません。
やればやるほど建物の出来が良くなるという側面もあり、膨大な業務量をこなしながら要領よくこだわりを成果に落とし込む能力が必須。
要領がよくても時間外労働の上限まで働くこともしばしばです。
飽くなき向上心と膨大な勉強時間が必要
「建築は雑学」とよく言われます。
建物の用途によってユーザーから求められる性能や法律が異なり、幅広い知識が求められるからです。
建築主と建物の方針を話す際に、建築主の事業に関する知識を持っていれば、それを活かして設計提案を行い、高い評価を得ることもできます。
また、地域特有の天気の知識が設計に役立ったり、その土地特有の土の性状を知っていると施工時に役立ったりします。
このようにあらゆる知識が建築に携わっていく中で役に立ちます。
逆に言えば、このような知識を持っていない場合は都度勉強して身に付けなければいけません。
そのためには、飽くなき向上心と、膨大な勉強時間が必要になります。
ときには週末のプライベートの時間でも勉強しないといけないこともあります。
出張・赴任が多いケースも
建築設計は出張や赴任が多くなるケースも多々あります。
当然ですが、建物の施工はオンサイト(現地)での仕事になるからです。
現場が遠隔地の場合でも頻繁に現場に出向く必要があります。
最近はウェブ会議によって出張や赴任を減らす方向性ではあります。
しかし、図を描きながら細かい調整を進めていく建設業においては、対面で集まって会話をしながら進めた方が断然効率が良いのが実情です。
建物の施工は年単位で続くため、場合によっては一年中出張ばかり、もしくは長期赴任、ということになります。
家族との時間を大切にしたい人にとっては辛い時期になるかもしれません。
一級建築士などの資格取得の負担が大きい
建築設計で仕事をしていくのであれば、一級建築士は取得したいところです。
ですが、一級建築士資格は取得するのにはとても大きな負担がかかります。
一級建築士資格は最難関国家資格の1つとされており、膨大な時間と費用が必要となるからです。
資格を取得するのに必要な時間は1,200時間とされています。
最近の法改正で学生のうちから試験を受けられるようになりましたが、まだまだ社会人になってから取得する人が多いのが実情です。
仕事をしながら1,200時間を確保するのは非常に負担が大きく、プライベートの時間は大幅に削られます。
資格学校に通うのには毎年50~100万円の費用が必要となります。
年に1回の試験に合格することができなければ合格するまで毎年です・・
時間面、金銭面において、一級建築士は取得するのに非常に大きな負担がかかる資格です。
資格取得が必ずしも収入アップに繋がらない
一級建築士は取得しても収入アップに繋がりにくい資格と言えます。
一級建築士は基本的には雇われて給料をもらうサラリーマンであることがほとんどだからです。
アトリエ系設計事務所を除けば、企業に勤めるケースがほとんどです。
企業に勤めている場合、一級建築士を取得したとしてもお給料は変わらないか、手当を出している企業でも毎月数万円の収入アップのみです。
一級建築士は取得したとしてもサラリーマンの枠を出ず、一般サラリーマンの中では収入が多いほうに分類される程度に留まります。
CAD/BIM/CAEなど覚えることが多い
昔のように紙と鉛筆、電卓を使って設計しておけばよいという時代ではなく、CAD/BIM/CAEといったデジタルエンジニアリングツールを使って、効率的かつ高度な設計をすることが求められます。
建造物を設計したり、干渉確認、CAD/BIMオペレーターの作業確認などをする場合は、CAD/BIMを使います。
また建造物の強度計算はCAEで行われ、安全に設計できているかを確かめる必要があります。
したがって、建築設計はCAD/BIM/CAEといったツールを覚える必要があります。
ただでさえ、専門的な用語が多く、覚えることが多いですが、ここに輪をかけて最新ツール(武器)を覚える必要もあり、建築士からも悲鳴的な声が出ているのも確かです。
長時間のパソコン作業を強いられる
上記でご紹介したCAD/BIM/CAEはパソコンにインストールされたソフトです。
設計段階では建築設計はこれらのツールを使って、関係者と仕事を進める必要があるため、パソコンの前に長時間座る場面もでてきます。
こういったパソコンの前に座ってやる作業をVDT(Visual Display Terminalsの略)作業と言われ、目、肩、腰、首が疲れやすくなってしまいます。
椅子に長時間座っている関係で血流が悪くなって疲れにつながります。
こういった症状はVDT症候群と呼ばれ、定期的にストレッチをするなど既に様々な対処法があります。
建築設計のやりがいや良い点
今までは建築設計の辛い点を挙げましたが、もちろんやりがい、楽しいところもたくさんあります。ここではやりがいや良い点を挙げていきます。
自分が設計・施工した建物が建つ
自分が設計・施工した建物が建つ、というのが建築設計の大きなやりがいの一つと言えます。
モノづくりが仕事の建設業において、建物が建ち、利用者に喜んでもらうのが重要な目的だからです。
数年かけて設計・施工した建物が竣工し、たくさんの人に利用されているのを見るのは本当に嬉しいことです。
GoogleMapで建物の名前を見つけて満足感を得ることもあります。
モノづくりが好きで建築を志した者として、自分が作ったものが世の中に存在し、役に立っているというのが大きなやりがいになります。
モノづくりを通して自己実現欲求を満たせる
建築設計はモノづくりを通して自己実現欲求を満たすことができます。
自分にしか作れないものを作りきったと感じることができるからです。
建物は一品生産であり、世界を探しても同じものはありません。
オリジナルの建物を様々な困難を乗り越えて作り切ることで、自分のやりたいことをやりきったという感覚が強くなり、まさに自己実現欲求を満たすことができます。
建物は世界で一番大きい人工物なので、これほどまでに自己実現欲求を満たせる達成感は類を見ないでしょう。
幅広い知識とコミュニケーション能力が身に付く
建築設計は仕事をしていく中で幅広い知識とコミュニケーション能力が身に付きます。
新しい建物に携わる度に新たな知識を身に付ける必要がありますし、とても多くの人と連携を取りながら建物を作り上げていくからです。
病院の設計をする場合、医療や衛生対策に関する法律を学ぶ必要があります。
その病院が専門としている領域についても学び、治療にどのような設備が必要で、どのような性能の部屋が必要なのかを学ぶ必要があります。
病院の使い勝手もとても重要な要素なので、お医者様にヒアリングをしながら条件を整理していく作業も必要です。
このように、建築設計は幅広い知識とコミュニケーション能力に磨きをかけながら成長していく仕事です。
建築設計の将来性
建築設計の悪い点、良い点を知ったところで、では将来性はどうでしょうか?
将来、仕事がなくなってしまうのでしょうか?
ここでは建築設計の仕事の将来についての展望を簡単に解説します。
首都圏の建物密度、AIの台頭などから建築設計の活躍の場がなくなっていくのではないか、という心配を抱く方もいますが、建築設計の仕事がなくなることはまだないでしょう。
建物の新築工事は今でも活発に行われており、設計や施工計画におけるクリエイティブな仕事においては、まだまだAIが台頭できるシーンは限られているからです。
首都圏に既に多くの建物が存在しているのは事実ですが、老朽化が進んだり、備えている設備が現代の要求を満足しないなどの理由から、今でも活発に建替えによる新築工事が行われています。
また、リノベーションやリフォームなども建築設計者の活躍の場として市場が拡大しています。
AIは機械的な作業は得意ですが、クリエイティビティにおいてはまだまだ人間に匹敵するほどの能力は備えていません。
建築士の目指すAIの使い方としても、建築士の単純作業の負担を減らして、クリエイティブな作業の時間を増やすという方針であるため、AIに建築設計士の活躍の場を全て奪われるということは想像しにくいです。
建築士の醍醐味であるクリエイティブな仕事の時間を確保するためのツールの1つとして、AIを前向きに捉えることがこれからの建築士の正しい姿勢です。
以上のことから、建築設計の将来はまだまだ実りあるものとなるでしょう。
建築設計士の年収アップの方法
ここでは建築設計士の年収アップの方法について解説いたします。
大手会社への転職
1つ目は大手会社への転職です。
一般的な候補としては、大手の設計事務所、ゼネコン、ハウスメーカーとなります。
これらの企業に就職することができれば担当者でも600~900万程度の収入を期待することができます。
建築業界の転職におすすめな転職エージェントとして建築転職があります。名前のとおり、いかにも建築業界に精通していそうです。
登録は30秒ででき、無料なのが嬉しい所です。
ちなみにチャット画面は以下のような感じで、まずは建築業界のどんな職種を選ぶようになっています。
コンサルタントへの転職
2つ目はコンサルタントへの転職です。
建築主側の大手の企業は自社の施設を建設するためのコンサルタントを雇っていることが多くあります。
自社にとっての最適な建物を費用を抑えて建設するために、建築の専門的な知識を持っているコンサルタントを雇って、建設会社とやり取りを有利に進めるためです。
大手の設計事務所やゼネコンからヘッドハンティングでコンサルタントを雇うケースも多いので、ここに年収アップのチャンスがあると言えるでしょう。
ハイクラス特化型転職エージェントでヘッドハンティングというと、リクルートダイレクトスカウトがおすすめです。
転職後平均年収950万円以上のハイクラス案件のみがそろっているのと、そういった企業から直接スカウトが届くという仕組みになっています。
建築設計が活かせる副業から始める
転職という解決策でなくとりあえず今のスキルで副業から始めようという選択肢もあると思います。
もちろん転職は時間もかかるので、転職活動しながら副業するというのもありです。
- CADやBIMで図面やモデルを作成する
- 一級・二級建築士の受験指導をする
- 建築関係のアドバイス・コンサルタントをする
- 建築関係の記事執筆料をもらう
建築設計の経験を活かした副業というとザっと挙げても上記のようなものがあると思います。
今の世の中、以下のようなクラウドソーシングサービスが充実しており、そこに登録しておくと仕事がもらえ、報酬をゲットできます。
登録も無料なので複数のサービスに登録しておき仕事をもらえる確率を上げるのがポイントです。
月に5万円は稼げると思いますよ。
以下にも建築士におすすめの副業や詳しいやり方をまとめてありますので是非参考にしてみて下さい。
建築設計以外の新しいキャリアを模索してみる
自分には建築設計の仕事が向いているのだろうか?
他にも自分に合う仕事があるのではないだろうか?
そう悩む人もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな方にはキャリアコーチングというサービスがおすすめです。
キャリアコーチングでは建築設計に限定せずに、自分の強み、興味、経験などから自分の将来のキャリアについて相談、カウンセリングしてくれるサービスです。
以下に年代別のキャリアコーチングのおすすめや、転職エージェントとの違いなどをまとめてあるので参考にしてみてくださいね。
建築設計ができる職種は潰しが効くのも事実
ここでは建築設計士ができる他の職種を紹介いたします。
CAD、BIMオペレーター・エンジニアへの転職
建築設計士のかたにはCAD/BIMを使って仕事をしていた人が多いと思います。
モノづくりに携わりたいが、建築士ほど責任を負いたくないという場合は、CADやBIMのオペレーターやエンジニアに転身することがおすすめです。
もちろん、CADやBIMのオペレーターやエンジニアも責任はありますが、建造物に対して責任をおう建築士ほどではありません。
CADやBIMのオペレーターやエンジニアの転職におすすめの転職エージェントが前述した建築転職です。
こちらに登録しておけば、建築士とCADやBIMのオペレーターやエンジニアの両面から転職活動ができますね。
登録は30秒ででき、無料です。
ちなみにチャット画面は以下のような感じで、希望職種してCADオペレーターを選ぶ事ができます。
指定確認検査機関への転職
一級建築士は指定確認検査機関への転職の道があります。
指定確認検査機関とは、行政に代わって建物が法に適合していることを確認する機関です。
年収は600万円程度となりますが、設計者や施工管理者ほど時間外労働は多くないことが多いです。
家族との時間を増やしたい場合は、一つの選択肢となります。
建築設計を辞めると決断した時の円満退社方法
どうしても辛いと感じる時は、辞めて転職するのも選択肢です。
今は便利な事に退職代行サービスもありますので自分から退職が言いづらい場合は活用してみても良いと思います。
まとめ
建築設計の実情は、いかがだったでしょうか。
大きなやりがいと引き換えに、身体・心・時間の負担が大きいのが一級建築士の仕事です。
これからもまだまだ仕事の絶えない職業ですが、あなたの人生のライフワークバランスに留意して進路を決めるようにしましょう。
もしこれから建築士を目指そう決意しているかたには、以下のスタディングで資格取得に向けた勉強をしていっても良いと思います。
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