院卒で生産技術への就職や転職を考えている方、もしくは、院卒で生産技術をやっている皆さんで、院卒で生産技術の仕事はもったいないと言われた経験はありませんか?
私もそのような経験があり、本当にこのまま生産技術の仕事でいいか悩んだことがあります。
現在私は、メーカーで生産技術の仕事をしており、製造現場の省人化や自動化を行う仕事をしています。
そんな私ですが、経験を積むごとに生産技術へのマイナスな考えも変わってきており、今では信念と誇りを持って仕事をやれるようになってきました。
そこで今回、私の経験もご紹介しながら、院卒で生産技術の仕事に就くことについて、もったいないと言われる理由や逆にメリットなところ、キャリア形成や年収アップの方法について本音で語っていきたいと思います。
院卒で生産技術はもったいないと言われる理由はある?
私自身が感じている、もしくは一般的に言われている理由は下記のとおりです。
- 大学院で学んだ事を生産技術にいかせないところもある
- 学歴がなくても働ける?
- 年功序列で給料が低いことがある?
- 転職しにくい
- 研究開発や設計に比べて生産技術は地味なイメージがある?
一つずつ説明していきたいと思います。
大学院で学んだ事を生産技術にいかせないところもある
大学で学んだ専門分野と、就職した会社の分野が異なる場合、学んだことを全く生かせないことがあります。
特に工学以外の分野の研究をされていた方は、知識を生かせないと感じることが多いでしょう。
ただしこれに関しては、他の部署で採用された際にも同じようなことが言えると思います。
最近は各社人事でもこういった人材のミスマッチをなくすような取組みがされるようになってきました。
またそもそも学んできたことを生かせるか、生かせないかは自分の気持ちの持ちようで、どうにでもなりますし、生かせるように活動する前向きな姿勢が大事だと思います。
もし最初の配属先でミスマッチがあったとしても今後の異動で改善される可能性も大きいですし、異動願いを出すなど、希望通りの仕事ができるよう、自身の働きかけも必要です。
学歴がなくても働ける?
会社によって考え方が大きく違うところではありますが、生産技術を現場からの生え抜き中心で構成している会社があります。
その場合、高卒の方の割合が多くなるため、学歴がなくても働けると思われがちです。
また、生産技術の仕事は、仕事に就いてからの経験が物を言う世界ではありますので、
高校や学部卒で就職し、現場でたくさん経験を積んだ人の方が、仕事上有利に働くこともあります。
年功序列で給料が低いことがある?
院卒の方は、研究開発や設計に配属される方が多いと思います。
それらの部署は基本的に成果主義で、入社してからすぐに給料が上がっていくことが多いです。
それと比較して生産技術は、年功序列であることに加えて、一人前になるまでにあまり成果を上げれないため、給料が上がりにくいことがあります。
ただし、こちらも会社の考え方によって異なりますので、一概にそうとは言えません。
転職しにくい
生産技術の仕事は、一人前になるために4~5年以上かかることが多いため、一人前になる前に転職する場合は、持っているスキルや実績が少なく、転職しにくい可能性があります。
ただ生産技術以外の仕事に転職したいという場合は、この限りではありません。
研究開発や設計に比べて生産技術は地味なイメージがある?
「生産技術」という仕事は、製造業に詳しくない方から見ると地味に思われることが多いです。
花形は、研究開発や設計と思われている方が多く、もったいない言われてしまうことも多いです。
しかし、研究開発した結果を実際の製品づくりに生かしていくのは生産技術であり、生産技術が構想した内容をもとに設計が動きます。
生産技術無しでは成り立たないため、製造業の花形は生産技術であると私は考えています。
院卒で生産技術をやるメリット
- 大学院で学んだ事を生産技術に生かせるところ
- 問題解決のプロセスが身に付いている
- 新しい知識・技術をいかせる
- 研究が肌に合わない人に適性の可能性がある
- 難しい仕事を早い段階から任せてもらえる
大学院で学んだ事を生産技術に生かせるところ
工学系の研究室に在籍している場合、生産技術に生かせることは多いです。
機械系であれば、図面作成や機械設計、CADを使った経験は生かせます。
研究内容自体も、材料や解析、測定技術、制御、電気についての研究はそのまま仕事に生かせることが多いです。
また、近年はロボティクスやプログラミング、AI等も製造現場に活用され始めてきていますので、それらの研究が十分に生かせます。
私の場合は、研究で元素分析装置を使用した経験があり、現在も似たような機器を用いて分析を行うことがあるため、経験をを仕事に生かすことができました。
問題解決のプロセスが身に付いている
研究をやる上で、問題や課題を見つけ出し、それをどのように分析し、どのように解決していくのかという、問題解決のプロセスを踏むことが多いと思います。
生産技術の仕事の流れもそれと同じです。
学部生の方と比較して、そのプロセスに慣れている方が多いと思いますので、生産技術の仕事にすんなり入っていけるのではないかと思います。
新しい知識・技術をいかせる
前述しましたが、最近は製造現場にもAIなど新しい技術がどんどん入ってきています。
具体的には、製品の傷や汚れの検査をAI画像検査機を使って自動で行ったり、産業用ロボットを使って製品の組立や搬送を行ったりすることが増えてきています。
しかしそれに対して、それらを扱える人材は足りていません。
院卒の方は、論文や各種の媒体から新しい知識に触れ、それを理解する能力に長けている方が多いです。
加えて、それら新しい技術を研究内容としていた方は、現場から見ると、喉から手が出る程欲しい人材になります。
研究が肌に合わない人に適性の可能性がある
研究を続けてきた方で、自分が研究に合わないと思っている方もいると思います。私もそうでした。
研究は、既存の理論や技術を発展させて、新しいものを作っていくことが多いですが、生産技術では、既存の理論・技術をいかにうまく活用するかが大切になっていきます。
もちろん新しい技術の導入も大切ですが、製造するためには技術の信頼性が必要ですので、ある程度確立されたものを使う必要があります。
0から1を生み出すのではなく、たくさんの知識・経験の引き出しを持つことが大切です。
研究が肌に合わない方が、生産技術の仕事に向いている可能性は大いにあります。
難しい仕事を早い段階から任せてもらえる
院卒の方は、しっかりとした「考える力」を持っているため、早い段階で仕事を任せてもらえます。
そうなると一人前になる時間も早まり、出世も早くなります。
また、一人前になってしまえば、製造業であればどの会社にも生産技術の仕事がありますので、転職もやりやすいメリットがあります。
私の場合も、学部卒や高卒の方と一緒に入社しましたが、学部卒や高卒の方が、まず基礎知識や考え方の習得から始めるのに対し、私は実際の仕事を担当しながらOJTという形で学んでいきました。
院卒で生産技術のキャリアアップや年収を上げる方法
部署異動でのキャリアアップ
生産技術で入社した後は、生産技術内で出世していくパターンと、現場で得た知識を用いて、研究開発や設計、(技術)営業に異動するパターンもあります。
また、製造部門の長を任されるパターンもあります。
私の場合は、生産技術内で上を目指していきたいと考えています。
また、私の会社の社長は、最初は生産技術で仕事をし、その後製造部長を経て、本部長、執行役員、社長と出世されています。
転職でのキャリアアップ
製造業であれば、生産技術の求人はたくさんあります。
また、アドバイザーやコンサルタントの仕事に就く方もいらっしゃいます。
例えば最近ですと生産現場のDXコンサルタントはニーズあると思います。
工場のデジタル化も進んできているので、生産現場の実務を知っているほどDX化するべきポイントが分かったりと顧客への提案に説得力が増すと思います。
転職をする場合は、それぞれの業界に特化した転職エージェントに相談に乗ってもらうと良いです。
やはり業界に精通したエージェント(キャリアコンサルタント)であるほど、転職希望者の今までの業務経験を理解した上で、その人にあった転職先を提案してくれるので。
以下は機械設計におすすめの転職エージェントをまとめていますが生産技術の業界にも精通しているのでおすすめです。
もし生産技術の中でCADを習得し、CADオペレーターとして転職をしたいという人は以下の転職エージェントがおすすめです。
副業で稼ぐ
現状、副業として生産技術の仕事を生かすのは難しいと思います。
全く関係のない副業をするか、自分の経験を発信してお金を稼ぐ方法はあるかと思います。
例えばCADについての副業やプログラミングや動画編集の副業はニーズも多く、稼げるのでおすすめです。
まずは月に5万円稼ぐことを目標にするといいですよ。
資格所得して手当や昇格に繋げる
生産技術で役に立つ、もしくは手当・昇給につながる資格には、下記のようなものがあります。
ただし、割と能力・実力主義的な所が多く、資格はあまり重視していない傾向があります。
- 機械保全技能検定
- 生産技術者マネジメント資格
- CAD関連の資格
- 技術士
- プログラミング関連の資格
CADの資格や技術士については以下の記事にまとめていますので参考にして頂ければと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。院卒で生産技術はもったいないと言われているのも事実ですが、実際にはそれ以上のメリットがあります。
生産技術の仕事は、たくさんの知識と経験が要求されるため、入社してからの頑張りが必要ですが、大学院で培った知識や課題に対しての考え方は、とても強い武器になります。
製造業にとって生産技術は非常に重要な仕事で、やりがいのある仕事ですので、ぜひたくさんの院生にトライしていただければと思います。
コメント