施工管理の仕事は辛い、やめとけとよく言われます。
本記事では、ゼネコンでの改修工事の施工管理の経験がある筆者が、施工管理の仕事が辛いと言われる理由と、将来性、年収アップの方法などを解説します。
今回は、施工管理を経験されている技術者の方に書いて頂きました。
施工管理の仕事がつらいと感じる時でも年収アップを目指す対処方法についても触れています。ぜひ参考にしていただければと思います。
施工管理が辛い・やめとけと言われる理由
長時間労働・残業が多い
施工管理の仕事は他の職種に比べて長時間労働になりやすく、残業が多いです。
JCU日建教が出している2022時短アンケートダイジェストを見てみても、外勤建築の残業時間が一番多いです。
全産業と外勤建築の月間平均残業時間を比べても約4倍ぐらい外勤建築の方が多いデータになっています。
これは、施工管理の業務内容が大きく影響しています。
施工管理者は、日中の職人が現場で作業をしている間は、現場を巡回して指示通りに工事が進んでいるかをチェックしたり、翌日以降の作業について、職長と打ち合わせをしたりしています。
その後職人が現場での作業を終えて帰宅すると、現場事務所へ戻り、書類の作成をします。
このように、現場での作業が終わった後も業務があるので、必然的に残業が必要となり、長時間労働になりやすいのです。
私自身の経験を振り返っても8時〜17時の間は現場で打ち合わせや安全管理、現場写真の撮影等を行い、17時以降に会社に戻って施工図や書類の作成をするというスケジュールで働いていました。
そのため、残業時間は平均で40h/月を超えていました。
休みが少なく、休日出勤が多い!有給休暇の取得率も低い
建設現場の作業は、基本的に屋外での作業が多いため、天候の影響を受けます。
そのため、時期によっては予定していた作業がなかなか進まず、工期に間に合わなくなることも珍しくありません。
資材の供給の遅れなどが原因で、工事が遅れることもあります。
このような原因で工事が遅れる場合、遅れを取り戻すために休日に作業を行います。
また、工事に遅れが生じていなくても、書類作成のために休日出勤をすることもあります。
以前、外壁改修の公共工事を担当したことがあるのですが、悪天候により工事が遅れたのに加えて、公共工事は必要書類が特に多いため、書類作成作業も間に合わず、工期中の土曜日はほとんど休日出勤していたことがありました。
そのほかにも、会社や店舗の中で工事を行う場合、周囲への安全確保や店舗の営業への影響に配慮して、工事を休日に行うよう指示されることもあります。
そうなると、必然的に休日出勤をすることになり、休みが減ってしまうのです。
更に追い打ちをかけるように有給休暇の取得率もそれほど高いわけではありません。
厚生労働省の令和4年就労条件総合調査によると、付与された有給休暇取得率を全産業と建設業で比べると、全産業が56.3%であるのに対し、建設業は53.2%です。
以前よりかはだいぶ上昇傾向にありますが、これは建設業全体での取得率なので、内勤者も含まれます。
外勤者である施工管理だと、私自身の経験を振り返っても、もう少し取得率が低くなる印象があります。
体力が必要
施工管理の仕事は、体力勝負です。
作業は基本的に屋外で行うため、夏の暑さや冬の寒さに耐えながらの業務になります。
また、広い工事現場を歩き回って、工事の進捗状況や安全の確認をする必要があるため、とにかく体力が必要です。
私の経験でも、現場で作業がある日のスマホの万歩計は常に1万歩を超えていることが多かったです。
危険が多い
施工管理の仕事は、常に危険と隣り合わせです。
建設現場には、色々な機械や資材があり、それら自体も扱い方によっては危険が生じます。
また、例えば高い足場の上を歩いたり、夏の暑い中での作業で熱中症のリスクがあったりと、常に危険と隣り合わせの状況で仕事をしています。
私が担当した現場では、幸運なことに事故が起きたことはありませんでしたが、風が強い日には足場が揺れるため、安全対策をしていても、歩くのはもちろん、見ているのも怖いなといつも感じていました。
業務量が多く、マルチタスクになる
施工管理の仕事は、とにかく業務量が多いです。
例えば、現場の安全管理をしたり、進捗状況を確認したり、設計者・施主・職長といった関係者との打ち合わせをしたりと、業務内容は多岐にわたります。
加えて、これらの業務を並行して行う必要があるため、マルチタスクをこなせなければ、かなり辛い職種であるといえます。
コミュニケーション能力が必要
施工管理の仕事は、職人にお願いをして作業をしてもらい、工事を進めることです。
そのため、作業を円滑に進めるために、職人へ分かりやすく的確な指示を出し、時には無理をお願いするための交渉が必要になるときもあります。
職人にも様々な年代、性格の人がいます。
優しい人ばかりでなく、時には、気難しい職人に対しても、指示を出したり交渉したりする必要があります。
また、女性や若い現場監督の指示は聞いてもらえないということもありますので、職人とのコミュニケーションに苦労する人は多いです。
どんな人とも円滑なコミュニケーションを取る能力が求められる仕事です。
マネジメントスキルが必要
上記のように関係者とのコミュニケーションスキルが必要なうえに、そういった人たちをマネジメントしていく必要もあります。
そもそも天候などでスケジュール変更が多い仕事の上に、職人などに動いてもらって仕事を進めていく必要があるので、マネジメントスキルとコミュニケーションスキルはセットで必要と言っても過言ではありません。
施工管理に向いている人の特徴は?
では、施工管理に向いている人とはどんな人でしょうか?
基本は上記で上げた『辛い点』を克服できる人が向いていると言えると思います。
例えば箇条書きで挙げると以下のような人を施工管理に向いていると言えるでしょう。
- マネジメント力と計画性がある
- コミュニケーション能力がある
- 判断力や問題解決能力がある
- 責任感とリーダーシップがある
- ストレスに強い
- 建築や土木工学などの技術的な知識をもっている
施工管理の将来性は?需要は増えていくの?
建設業の需要は、これからもなくなることはないでしょう。
新築工事・新設工事こそ、昔に比べると減ってきたと言われますが、建設物を長く使うにはメンテナンスが必要です。今後は、改修工事も増えていくことが予想されます。
また、CADやBIMの普及により、業務の効率化が図られています。
CADが普及したことで、図面の変更や修正が容易になりました。
またBIMは、最近では中小企業でも普及し始めており、各種図面のデータや必要な資材、コスト情報などを一元管理できるうえ、関係者間でこれらの情報を共有できるようになりました。
施工現場では、概算コストの計算や、部材数量の確認などに役立っています。
さらに、最近はICTの普及も推進されています。
ICTは、現在は主に土木の分野で採用されており、ドローン等を用いた測量や、3Dモデルを活用して自動で建設機械を動かして施工するなどの取り組みが行われています。
今後もコンピュータの発展により、作業の自動化や効率化が進み、施工管理の仕事の負担が軽減されて行くものと考えられます。
施工管理の仕事は将来性があり、これまで辛いといわれてきた部分も、コンピュータを用いた技術の発展により、改善していくことでしょう。
施工管理の年収と年収アップ方法
年収
施工管理専門の求人サイトであるセコカンプラスの調査では、施工管理の年収は、平均約620万円(平均年齢42.0歳)と書かれています。
これはサラリーマンなどを含む全職種と比較して、130万円ほど高いという結果になっています。
施工管理という職種は、仕事が大変な分、年収が高くなっています。
また東洋経済オンラインの「平均年収が高い会社」ランキングによれば、スーパーゼネコンの平均年収は以下のようになっています。
- 大林組 1025万(平均年齢 42.6歳)
- 清水建設 977万(平均年齢 43.1歳)
- 大成建設 963万(平均年齢 43.0歳)
参考:東洋経済オンライン 「平均年収が高い会社」ランキング全国トップ500
各会社の平均年収は、それぞれ施工管理の仕事をしている人だけではなく、他の職種の人も含めた平均年収ですが、平均年収はかなり高いことが分かります。
転職して年収アップを目指す
平均年収の高い施工管理ですが、給与の額は、やはり会社によって異なります。
そのため、現在勤めている会社での大幅な年収アップを見込めないのであれば、転職するという手段があります。
人生は長いようで短いです。面白くない仕事を続けているほど無駄な時間はありません。
転職先としてまず考えられるのは、大手のゼネコンです。それまでの経験や資格を活かして転職ができれば、年収アップにつながります。
施工管理や建築業界に転職するなら以下の2つの転職エージェントを活用するのがおすすめです。
転職を成功させるコツは、これらの転職エージェントに複数登録することで、自分に合った転職先に出会える確率を上げることです。
・各転職エージェントも扱っている求人に違いがある
・転職エージェントの担当者も人なので、相性が合わないや知識量に差があったりする
複数の転職エージェントの中から、最終的には自分に合ったところで転職活動を進めていくようにしましょう。
転職は運も必要です。素晴らしい企業の求人タイミングを逃さないようにしたいですね。
おすすめ転職エージェントの1つ目は建築転職です。
登録はホームページ内にある以下のようなチャットから、まずは建築業界の職種を選ぶところからスタートです。
ここで施工管理を選ぶ事ができます。
2つ目はセコカンネクストです。
以下の通り、施工管理関係の求人だけでも2万件以上があります。
その他、建築業界に強い転職エージェントは以下でもまとめてあります。タイトルにはCAD/BIMオペレーターとありますが、その他の建築の仕事にも適用しています。
また、施工管理の経験を活かして、他の職種へ転職することも考えられます。
例えば工事監理(設計図書のとおりに工事が進められているか確認する仕事)であれば、職種が変わっても、それまでの経験を活かすことができます。
ただし、工事監理の場合は建築士資格を求められる場合もありますので、施工管理の仕事をしていても、建築士資格を取得するほうが、より有利に転職活動を進められそうです。
他の職種への転職の例として、公務員も挙げられます。
公務員へ転職する場合は試験が必要であり、転職後の業務内容も工事監理、検査業務など様々ですが、施工管理の仕事での経験を活かして活躍できるかと思います。
副業する
施工管理の仕事で培ったスキルを活かして、副業をするという方法もあります。
例えば、図面から必要な材料とその数量を拾い出し、工事にかかる金額を算出する積算という作業があります。積算のスキルがあれば、副業として積算業務を請け負うことが可能です。
また、現場で作業をするために、設計図よりさらに詳細な施工図というものを作成します。この施工図を作成するスキルがあれば、積算同様、副業として請け負うことができます。
このように、施工管理の仕事の中で必要になる特殊なスキルを磨けば、副業として収入を得ることができます。
副業案件の見つけ方は、今はクラウドソーシングというサービスがあり、そこで施工図、製図、積算等の仕事を探して、応募するといった感じです。
詳しいやり方やコツ、稼げる金額などは、以下の記事を参考にまとめてあります。
資格を取得して手当をもらう
施工管理には後述するような取得するとおすすめの資格があります。
そういった資格を取る事で資格手当をもらったり、転職する際も年収アップの交渉材料にもできます。
施工管理におすすめの資格は?
ここでは施工管理におすすめの資格をいくつかご紹介します。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は一級と二級があり建設業法第27条に基づく、国家試験です。
建設現場の施工管理業務に関する知識や技能を有することを証明する資格です。
施工管理士
施工管理士は国家資格でないというのが建築施工管理技士との大きな違いです。
ですが建設工事の施工計画の策定や工程管理、品質管理、安全管理などの能力が身につく資格です。
建築士
建築士は設計という意味合いが強く一級と二級に分かれている国家資格です。
建築物の設計や監理に関する知識と資格であり、施工管理にも関連する専門知識を持っています。建築工事の全体像を把握し、施工過程での品質や安全性に関与する能力が求められます。
まとめ
施工管理の仕事は確かに辛いですが、裏を返せばそれが「やりがい」につながることもあるかと思います。
また、辛い仕事である分、平均年収は他の職種に比べると高くなっています。
それでも現在の年収に満足できないという場合には、スキルを積んで転職するか、副業をするといった方法があります。
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